採用キャッチコピーの役割と、求人票との違い
採用キャッチコピーは、求人の一覧やスカウトの受信箱で読み手の目を止め、本文を読むきっかけを作る1行の言葉です。業務内容と労働条件を正確に伝える役割は求人票が受け持ち、キャッチコピーは求人票の中身を短く予告する位置にあります。
役割が違っても、キャッチコピーで約束した内容が、求人票と面接で読み手に確かめられる点は同じです。「設計から任せる」と書いたのに求人票の業務内容が保守の作業ばかりなら、応募者は選考の途中でその食い違いに気づきます。
比べる点 | 採用キャッチコピー | 求人票 |
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役割 | 読み手の目を止め、本文へ進んでもらう | 業務内容と労働条件を正確に伝える |
長さ | 1行(求人のタイトル、件名、バナーの1文) | 項目ごとに必要なだけ |
置く場所 | 求人のタイトル、スカウトの件名、採用サイトのトップ | 求人媒体の本文、自社の採用ページ |
中身の裏付け | 求人票の記載と、社員が実際にしている仕事 | 労働条件と社内の制度 |
求人票に載せる項目と、記載と実態の食い違いを防ぐ書き方は「求人票とは?記載事項と食い違いを防ぐ書き方」で解説しています。
中途の転職者が勤め先を選んだ理由(令和7年転職者実態調査)
厚生労働省の令和7年転職者実態調査では、転職者が今の勤め先を選んだ理由(3つまでの複数回答)は「仕事の内容・職種に満足がいくから」が40.2%で最も多く、「自分の技能・能力が活かせるから」が38.4%で続きました。今の勤め先で正社員として働く転職者に限ると、「自分の技能・能力が活かせるから」が41.1%で、「仕事の内容・職種に満足がいくから」の40.7%を上回ります。
今の勤め先を選んだ理由(3つまでの複数回答) | 転職者の総数 | うち正社員 | 前回(2020年調査)の総数 |
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仕事の内容・職種に満足がいくから | 40.2% | 40.7% | 41.0% |
自分の技能・能力が活かせるから | 38.4% | 41.1% | 36.0% |
労働条件(賃金以外)がよいから | 23.1% | 24.6% | 26.0% |
賃金が高いから | 18.8% | 20.4% | 15.1% |
転勤が少ない、通勤が便利だから | 17.1% | 15.8% | 20.8% |
キャリアアップできるから | 16.6% | 19.5% | 調査項目なし |
出典:厚生労働省「令和7(2025)年転職者実態調査の概況」表13-1(2026年9月25日公表)
選んだ理由のうち一番の理由に絞っても、「自分の技能・能力が活かせるから」(17.7%)と「仕事の内容・職種に満足がいくから」(16.5%)が上位の2つです。
2020年の前回調査と比べると、「自分の技能・能力が活かせるから」は36.0%から38.4%へ、「賃金が高いから」は15.1%から18.8%へ上がりました。
同じ調査で、自己都合で前の勤め先を辞めた理由(3つまでの複数回答)は、「賃金が低かったから」(25.5%)、「会社の将来に不安を感じたから」(25.2%)、「満足のいく仕事内容でなかったから」(24.7%)の順でした。
中途採用の求人の1行目では、まず「どんな仕事をするか」と「これまでの経験のどこが活きるか」を言葉にすると、転職者が勤め先を選ぶときの見方と重なります。賃金や働き方の条件は、キャッチコピーの次の行や求人票の本文で、具体的な額や制度の名前として示すほうが、読み手にとって確かめやすい形です。
採用キャッチコピーの作り方(5つの手順)
採用キャッチコピーは、募集する職種と採用したい人を1人分に絞り、その人に向けて仕事の内容と活かせる技能を書き出し、裏付けの事実を添えてから言葉を削る順で作ります。最後に求人票の記載と照らし合わせ、求人表示のルールに反していないかを確かめます。
手順 | やること | 確かめる問い |
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1. 読み手を絞る | 募集する職種と、採用したい人の経験・希望を1人分に書く | 誰が読んで「自分のことだ」と思うか |
2. 仕事の内容を書き出す | 入社後に担う業務、扱う技術、関わる事業を挙げる | 入社して最初の半年に何をするかが分かるか |
3. 活かせる技能を書き出す | 読み手の経験のうち、入社後にそのまま使えるものを挙げる | 前職の経験のどこが活きるか |
4. 裏付けの事実を添える | 制度・体制・数字など、確かめられる事実を1つ選ぶ | 面接で聞かれたときに説明できるか |
5. 削って照合する | 方向の違う案を複数作って削り、求人票と表示のルールに照らす | 求人票の記載と食い違っていないか |
手順1〜3は読み手を絞り、仕事の内容と活かせる技能を書き出す
読み手は「バックエンドエンジニア」のような職種名で止めず、「決済まわりの開発を経験し、次は設計から任されたい人」のように経験と希望まで書くのが出発点です。読み手を広く取るほど言葉は「成長できる環境」のような、どの会社にも当てはまるものに寄っていきます。
仕事の内容は、入社後に担う業務・扱う技術・関わる事業の3つに分けて書き出します。活かせる技能は、読み手の前職の経験と入社後の業務が重なる部分です。たとえば受託開発で要件定義を担ってきた人なら、自社プロダクトの企画に関わる工程がその重なりに該当します。
エンジニアの採用で読み手を絞る手順は「エンジニアの採用における適切なペルソナ設計方法を解説。手順や注意点、採用成功のポイント」で解説しています。
手順4・5は裏付けの事実を添え、求人票と照らし合わせる
キャッチコピーの言葉には、面接や入社後に確かめられる事実の裏付けが必要です。「技術選定から関われる」と書くなら、選定の場に誰が出ているか、直近でどんな技術を選んだかを、求人票か採用サイトに書いておきます。
案は1つに決め打ちせず、前に出す要素を変えた案を複数作ってから削ります。募集する部署の社員と、採用したい人に近い経験を持つ社員に読んでもらい、「自分ならこの求人を開くか」を聞くのが、社内でしか通じない言葉を見つける近道です。
中途採用のキャッチコピーの型と作例
中途採用のキャッチコピーは、何を前に出すかで「仕事の内容」「活かせる技能」「役割と裁量」「事業の課題」「働き方の条件」の5つの型に分けられます。転職者が勤め先を選ぶ理由の上位2つである「仕事の内容」と「活かせる技能」の型を軸にし、ほかの型は2行目や求人票の本文で補う組み立てにします。
型 | 作例(編集部作成) | 裏付けに置く事実 |
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仕事の内容 | 物流の配車計画を、手作業から最適化の仕組みへ置き換える | 開発するシステムが対象とする業務と、置き換えの進み具合 |
活かせる技能 | 受託開発で磨いた要件定義を、自社プロダクトの企画で使う | 入社後に担う工程と、前職の経験が重なる部分 |
役割と裁量 | 2人目のSREとして、監視と障害対応の仕組みを決める | チームの体制と、自分で決められる範囲(ツールの選定など) |
事業の課題 | 契約書のレビュー待ちを、その日のうちに終わる仕組みにする | 事業が今抱えている課題と、その数字の出どころ |
働き方の条件 | リモート中心で、チームの定例は週1回だけ | 就業規則・制度の名前と、社内で使われている実績 |
作例は編集部が作成したもので、実在の企業のキャッチコピーではありません。
エンジニアの中途採用では、扱う技術や開発の工程の名前が、読み手にとって仕事の内容そのものを表します。「最新技術に触れられる」と書くより、使っている言語やクラウド、担う工程を名前で書くほうが、読み手が自分の経験と重ねやすい書き方です。
エンジニアの職種別の作例
エンジニアの中途採用では、職種ごとに読み手が確かめたい点が違うため、キャッチコピーで前に出す要素も職種ごとに変えます。たとえばフロントエンドエンジニアは利用者やデザイナーとの関わり方を、エンジニアリングマネージャーはチームの人数とコードを書く時間の割合を気にします。次の作例も、編集部が作成したものです。
職種 | 作例(編集部作成) | 読み手が確かめたい点 |
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バックエンドエンジニア | 決済の基盤を、設計からレビューまで任せる | 扱う言語とフレームワーク、設計に関われる範囲 |
フロントエンドエンジニア | 管理画面の操作を、利用者と話しながら作り直す | 利用者と話す機会、デザイナーとの分担 |
SRE・インフラエンジニア | 障害の振り返りを、仕組みの改善までつなげる | オンコールの体制、クラウドの構成 |
データエンジニア | 散らばった販売データを、1つの基盤にまとめる | データの量と種類、分析する側との分担 |
エンジニアリングマネージャー | 開発チームの採用と育成を、技術の判断と一緒に担う | 担当する人数、コードを書く時間の割合 |
作例の右の列は、求人票の業務内容と必須スキルの欄で答えておく項目です。キャッチコピーで触れた要素について、求人票の側で答えが見つからないと、読み手は応募の前に判断できません。
他社の事例を参考にするときに見る3つの点
他社の採用キャッチコピーの事例を参考にするときは、言葉の面白さより、その言葉が求人の中身とどうつながっているかを見ます。見る点は次の3つです。
- 読み手が誰か(職種と経験が言葉から読み取れるか)
- 言葉の裏付けが、同じ会社の求人票や採用サイトに書かれているか
- 自社の求人に置き換えたとき、同じ事実を自社でも示せるか
企業理念やブランドのスローガンを、そのまま採用キャッチコピーの事例として扱う記事もあります。理念の言葉は事業全体を表すもので、どの職種でどんな仕事をするかまでは伝えません。中途採用の求人では、理念は採用サイトのトップに置き、求人ごとのキャッチコピーには仕事の内容を書くと役割が分かれます。
読み手に誤解を与えやすい言い回し
「アットホームな職場」「成長できる環境」のように、どの会社の求人にも書ける言葉だけでは、読み手は自分に関係のある求人かどうかを決められません。同じ雰囲気を伝えたいなら、チームの人数や、新しく入った人が最初の1か月に何をするかといった事実に置き換えます。
「24時間戦える」「休日返上」のように長時間労働を思わせる言い回しや、「結果がすべて」のように評価の仕組みを示さないまま厳しさだけを伝える言い回しも、意図と違う読まれ方をしやすい表現です。評価の仕組みを伝えたいなら、評価の時期と基準を求人票に書き、キャッチコピーではその仕組みの名前を示すにとどめます。
採用キャッチコピーを求人・スカウト・採用サイトに展開する
同じキャッチコピーを、求人のタイトル、スカウトの件名と1行目、採用サイトのトップに置き、読み手がどこから入っても同じ約束を目にする形が目標です。置く場所ごとに表示できる長さと、読み手がそれを見る状況が違うため、1つの核になる文から長さの違う文面を作っておくと揃えやすくなります。
置く場所 | 読み手が見る状況 | 書き方の目安 |
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求人のタイトル | 求人の一覧で、ほかの求人と並んで見る | 職種名と仕事の内容を先頭に置く |
スカウトの件名と1行目 | 受信箱で、ほかのスカウトと並んで見る | 読み手の経験のどこを見て送ったかを書く |
採用サイトのトップ | 社名を知ったうえで訪れる | 事業の課題と役割を書き、職種ごとの求人へつなぐ |
キャッチコピーを置いた求人や採用サイトが外からどう読まれるかを確かめる方法の1つに、Offers のエンジニア採用力チェックがあります。企業のURLを入れると、公開情報を5指標24項目で採点したレポートが原則1営業日以内に届く無料の診断です。
スカウトの件名と本文の組み立て方は「スカウト文面の書き方|承諾率を分けた要素」にまとめています。
採用キャッチコピーで確かめる求人表示のルール
採用キャッチコピーも求人の情報の一部なので、職業安定法第5条の4が禁じる「虚偽の表示又は誤解を生じさせる表示」に該当しないかの確認が必要です。あわせて、男女雇用機会均等法第5条と労働施策総合推進法第9条に照らし、性別や年齢で応募者を絞る表現になっていないかも見ます。
法令 | 定めていること | キャッチコピーで確かめる点 |
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職業安定法 第5条の4 | 求人等に関する情報について、虚偽の表示又は誤解を生じさせる表示をしてはならない。募集の情報は正確かつ最新の内容に保つ | 書いた内容が求人票と実態に合っているか、募集を終えた職種のコピーが残っていないか |
男女雇用機会均等法 第5条 | 募集と採用で、性別にかかわりなく均等な機会を与える | 性別を表す職種名や、「男性歓迎」「女性歓迎」のような表示を使っていないか |
労働施策総合推進法 第9条 | 施行規則第1条の3第1項の各号に該当する場合を除き、募集と採用で年齢にかかわりなく均等な機会を与える | 年齢を条件にした言い回しになっていないか |
求人の情報に含める6項目(2024年12月の厚生労働省の通知)
厚生労働省は2024年12月18日の通知で、求人等に関する情報が職業安定法第5条の4第1項に反しないと認められるには、その情報の中に6つの項目を含める必要があるという解釈を示しました。6項目は、募集する者の氏名または名称、住所(所在地)、連絡先、業務内容、就業場所、賃金です。
出典:厚生労働省職業安定局需給調整事業課長「職業安定法第5条の4第1項で求めている内容について」(職需発1218第1号・2024年12月18日)
通知の例外は、職業紹介事業者と募集情報等提供事業を行う者が、照会を受けたら回答する旨を照会先とともに示す場合です。このときは、6項目が示されていないことだけでは誤解を生じさせるものとはならないと、同じ通知は定めています。
性別と年齢の表現で確かめる点
男女雇用機会均等法の施行通達は、「営業マン」「カメラマン」「ウェイトレス」「セールスレディ」のように男女のいずれかを表す語を含む職種名を例に挙げています。「男性歓迎」「女性向きの職種」の「等」には、「男性優先」「女性歓迎」「貴女を歓迎」なども含まれるという解釈です。
職種名を使いたいときは、「カメラマン(男女)募集」のように括弧書きで「男女」と付け加える方法や、「ウェイター・ウェイトレス募集」のように並べる方法が、同じ通達に示されています。
出典:厚生労働省雇用均等・児童家庭局長「改正雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律の施行について」(雇児発第1011002号・2006年10月11日、2016年8月2日最終改正時点)
年齢は、労働施策総合推進法第9条により、施行規則第1条の3第1項の各号(定年の年齢を下回ることを条件として期間の定めのない労働契約で募集する場合など)に該当しない限り、募集と採用で年齢にかかわりなく均等な機会を与える必要があります。社員の年齢構成を打ち出す言葉で確かめたいのは、特定の年齢層を優先して募集しているように読まれないかどうかです。求人票の応募資格と並べて読み直します。
採用キャッチコピーの効果の測り方と、見直す時期
採用キャッチコピーの効果は、求人の閲覧から応募に進んだ割合や、スカウトの返信率のように、キャッチコピーを読んだ後の行動で測ります。比べるときの原則は、キャッチコピー以外の条件(送る相手の層、送る時期、写真)をそろえ、一度に変えるのをキャッチコピーの1か所だけにすることです。
置く場所 | 測る指標 | 比べ方 |
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求人のタイトル | 求人の閲覧から応募に進んだ割合 | 同じ求人でタイトルだけを替え、同じ長さの期間で比べる |
スカウトの件名と1行目 | 開封率と返信率 | 同じ条件で選んだ候補者に、件名だけを替えて送る |
採用サイトのトップ | 職種ごとの求人ページへ進んだ割合 | 替える前と後の同じ長さの期間で比べる |
見直すのは、数字が下がったときに加えて、募集する仕事の内容や条件が変わったときです。職業安定法第5条の4第2項は、募集を行う者に、広告等で出す募集の情報を正確かつ最新の内容に保つことを求めています。
業務の担当範囲や使う技術、働き方の制度が変わったら、求人票と同じ日にキャッチコピーも書き換え、募集を終えた職種のキャッチコピーは採用サイトやバナーから外します。