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給与レンジ(年収レンジ)とは 設定手順と幅の決め方

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給与レンジとは、等級や職位ごとに決めた給与の下限から上限までの幅です。求人票に「年収600万〜900万円」と書く年収レンジも、この幅を年収で表したものです。

設定は、職務と等級の整理、市場の水準に合わせた中間額の決定、幅と隣の等級との重なりの決定の順に進めます。求人票の年収レンジを等級の給与レンジから決めておけば、採用時の提示額と入社後の処遇は食い違いません。

Offers HR Magazine編集部監修者

株式会社overflow / 編集担当

Offers HR Magazine編集部

Offers HR Magazine 編集部は、株式会社overflow が運営する採用メディアの編集チームです。エンジニア採用に取り組む人事・採用担当者に向けて、採用手法・人事制度・組織づくりの情報を届けています。

給与レンジとは何か

給与レンジは、等級(グレード)ごとに、その等級の社員に支払う給与の下限と上限を決めた範囲です。同じ等級の社員の給与は経験や評価に応じて範囲の中で決まり、昇格すると上の等級のレンジへ移ります。社内の制度では基本給や月給で決めることが多く、求人票では賞与などを含めた年収で示します。年収で示したものが年収レンジです。

例えば、ある等級の給与レンジを年収480万〜720万円と決めた会社では、その等級で採用する人への提示額も、入社後の昇給も、480万〜720万円の範囲に収まります。720万円を超えて処遇するなら、上の等級へ昇格させる形になります。

給与レンジを構成する下限・中間額・上限

給与レンジは、下限・中間額・上限の3つの値で決まる範囲です。中間額は下限と上限の真ん中の額で、ミッドポイントとも呼びます。等級に求める役割を十分に果たしている社員の水準として、市場の水準に合わせて置くのが基本です。

要素

意味

決め方の目安

下限

等級の要件を満たした社員に払う最低額

等級に上がった直後、またはその等級で採用した直後の水準

中間額

等級の役割を十分に果たす社員の水準

同じ役割の市場の水準に合わせる

上限

その等級で払う最大額

超えて処遇するときは昇格で扱う

レンジの形を表す比は2つあります。1つはレンジの幅で、(上限−下限)÷下限で求めます。年収480万〜720万円なら、幅は50%です。

もう1つは社員がレンジのどこにいるかを示す比で、本人の給与÷中間額で求め、コンパレシオ(compa-ratio)と呼びます。中間額600万円の等級で年収540万円の社員なら0.9となり、中間額より1割低い位置にいると読めます。

年収レンジと求人票の書き方

求人票の年収レンジは、社内の給与レンジを、賞与や手当を含む年収に直して求職者に示すものです。労働者を募集するときは賃金を含む労働条件を明示する必要があり、職業安定法に基づく指針等の主な内容には「労働条件の水準、範囲等を可能な限り限定するよう配慮が必要です」とあります(厚生労働省 広島労働局「職業紹介事業関係資料集」(令和8年10月))。

固定残業代を含めて年収を示すときは、基本給の額、何時間分の時間外手当として何円を支給するか、その時間を超えた時間外労働の割増賃金を追加で支給することを書きます。同じ資料が記載例に挙げている3項目です。

等級の給与レンジをそのまま求人票に載せると幅が広がり、求職者は自分の提示額を見込みにくくなります。採用で当てはめる等級と、その中で提示する範囲を先に決めてから書くのが手順です。

求人票の給与欄の書き方は「求人広告の給与表記はどう書くべき?重要性や適切な表記方法を解説」、内定時に示す給与と求人票との違いは「内定通知書の給与の書き方と必須項目、求人票との差」で扱っています。

給与レンジを決めると変わること

採用時の提示額、等級の中での昇給、人件費の見積もりの3つを同じ基準で判断できる点が、給与レンジを決める効果です。

判断すること

給与レンジを基準にして決められること

採用時の提示額

候補者の希望年収が上限を超えるとき、上の等級で採用するか見送るか

等級の中での昇給

中間額より低い社員と上限に近い社員で、昇給の幅をどれだけ変えるか

人件費の見積もり

等級ごとの人数×中間額で出す、来期の人件費の目安

給与レンジの設定方法

給与レンジは、①職務と等級を整理する、②等級ごとに市場の水準を調べて中間額を置く、③下限と上限の幅を決める、④隣の等級との重なりを確かめる、⑤今の社員の給与を当てはめる、の順に設定します。①と②で決まるのが中間額、③と④で決まるのがレンジの形です。

職務と等級を整理する

最初に、社内の職務を役割の大きさで並べ、等級に分けます。エンジニア組織なら、担当する範囲(機能の実装・システム全体の設計・チームの技術判断)や部下の有無で等級を分ける方法があります。同じ等級にまとめた職務は、同じ給与レンジで処遇する対象です。

マネジメントを担わない専門職を上位の等級に置くなら、管理職とは別の等級の列を作るかどうかもこの時点で決めます。

市場の水準から中間額を置く

中間額は、等級の役割に近い市場の水準を調べて置きます。公的統計で役職ごとの賃金が分かるのは、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」です。

同調査の令和7年の結果は厚生労働省の報道発表資料で2026年3月24日に公表され、結果の概況「役職別にみた賃金」では、一般労働者のうち雇用期間の定めのない者(男女計)の賃金が次のとおりでした。

役職

賃金(月額・千円)

非役職者を100とした格差

対前年増減率

部長級

635.8

204.8

1.4%

課長級

529.2

170.4

3.4%

係長級

399.2

128.6

3.4%

非役職者

310.5

100.0

2.5%

同調査の賃金は2025年6月分の所定内給与額の平均で、残業代と賞与を含みません(同調査 結果の概況)。年収レンジと比べるときは、月額に12と自社の賞与の月数を足した数を掛けて年額に直します。

自社の等級を部長級・課長級・係長級のどれに対応させるかを決めると、等級ごとの中間額の目安が出ます。職種ごとの水準を確かめる材料は、同じ調査の職種別の表と、自社と同じ職種で採用を競う求人の年収です。

エンジニアの職種・言語・スキル別の年収から中間額を置くときは、Offers のお役立ち資料にある「エンジニア年収レポート2026」を、市場相場と自社の報酬設計を比べる材料に使えます。

上限と下限の幅を決める

下限と上限は、中間額を真ん中に置き、レンジの幅を決めて求めます。中間額600万円で幅を50%にするなら、下限480万円・上限720万円です(480万円×1.5=720万円、真ん中が600万円)。

幅を広くすると、昇格させなくても同じ等級の中で長く昇給させられます。その分、同じ等級の社員の間で給与の差が大きくなるため、差を説明できる評価の基準が要ります。

幅を狭くした場合は同じ等級の給与がそろい、処遇を上げる手段は主に昇格です。役割の違いが給与に出やすい反面、昇格の枠が少ない組織では、上限に達して昇給が止まる社員が出ます。

等級間の重なりを決める

隣の等級との重なりは、下の等級の上限と上の等級の下限のどちらを高くするかで決まります。下の等級の上限のほうが高ければ、2つのレンジは重なっている状態です。

例えば、A等級を300万〜400万円、B等級を350万〜500万円にすると、350万〜400万円の範囲で2つのレンジが重なります。A等級で年収400万円の社員がB等級に昇格し、B等級の下限の350万円で処遇されると、昇格で給与が50万円下がります。

重なりを設けるなら、昇格後の給与を昇格前より下げない決まりを規程に入れておくことが前提です。重なりを設けない場合は、昇格すると給与が必ず上がるので、昇格の意味が社員に伝わりやすくなります。

給与レンジの種類

給与レンジは、隣り合う等級の関係で、開差型・接合型・重複型の3つに分かれます。3つの型の違いは、下の等級の上限と上の等級の下限の位置、つまり昇格したときに給与がどれだけ上がるかです。

型

隣の等級との関係

例(A等級→B等級)

昇格したときの給与

開差型

下の等級の上限 < 上の等級の下限

300万〜400万円 → 450万〜550万円

少なくとも差額分(例では50万円)上がる

接合型

下の等級の上限 = 上の等級の下限

300万〜400万円 → 400万〜500万円

上限にいた社員は下限に移ると変わらない

重複型

下の等級の上限 > 上の等級の下限

300万〜400万円 → 350万〜500万円

下限に置くと下がる場合があり、決まりが要る

開差型の特徴と注意点

開差型は、等級の間に給与の空白があり、昇格すると給与が必ず上がる型です。等級の違いが給与にはっきり表れるので、昇格の重みを社員に示しやすくなります。

一方で、下の等級の上限に達した社員は、昇格するまで昇給できません。昇格の基準と時期を明確にしておかないと、上限で止まる社員がたまります。

接合型の特徴と注意点

接合型は、下の等級の上限がそのまま上の等級の下限になり、レンジが切れ目なくつながる型です。等級の中で昇給を重ねた先が、そのまま上の等級の入り口になります。

下の等級の上限にいた社員は、昇格して上の等級の下限に移っても給与が変わりません。昇格時に一定額を上乗せするか、下限より上に置くかを決めておきます。

重複型の特徴と注意点

重複型は、隣り合う等級のレンジが一部重なる型です。経験の長い下の等級の社員を、昇格させないまま上の等級の下限より高く処遇できます。

重なりが大きいと、等級が違っても給与がほとんど変わらない社員が並び、等級の違いが給与から読み取りにくくなります。規程で決めておくのは、昇格時の給与の決め方と、重なりの範囲(下の等級の上限を上の等級の中間額より低くする、など)の2つです。

給与レンジの実際の運用方法

給与レンジの運用では、昇格したときの給与の決め方、等級の中での昇給の幅、上限を超えた社員と下限を下回る社員の扱いの3つを、先に規程で決めます。決めておけば評価のたびに個別の判断をせずに済み、人件費の見通しも立ちます。

昇給と昇格の連動

等級の中での昇給の幅を決める材料は、評価の結果とレンジの中の位置の2つです。同じ評価でも、中間額より低い社員は昇給の幅を大きく、上限に近い社員は小さくすると、時間とともに社員の給与が中間額の近くへ集まります。

レンジの中の位置(コンパレシオ)

評価が標準の社員の昇給の例

0.9未満

大きめに上げる

0.9以上1.1未満

標準の幅で上げる

1.1以上

小さめに上げる、または昇格の候補として扱う

昇格したときは、上の等級の下限か、昇格前の給与に一定額を足した額の高い方に置く、といった決め方を規程に書きます。重複型・接合型のレンジでは、この決まりが無いままだと、昇格の前後で給与が変わらない社員を防げません。

上限を超える社員と下限を下回る社員の扱い

制度を入れた直後は、今の給与がレンジの外にある社員が出ます。上限を超える社員は給与を下げずに昇給を止めるか小さくし、下限を下回る社員は数年かけて下限まで上げる扱いが、社員の不利益を避ける方法です。

給与を下げる変更は社員にとって不利益な変更になるため、就業規則や賃金規程を変える手続きと、本人への説明が要ります。外れる社員の人数と、下限まで上げるのに要る額は、⑤の当てはめの時点で数えておきます。

人件費の見積もり

等級ごとの人数に中間額を掛けた額が、レンジを決めた後の人件費の目安です。今の人件費との差が大きいときは、中間額を置き直すか、下限まで上げる期間を延ばして調整します。

採用計画で増やす人数も等級ごとに数え、中間額で見積もります。中途採用で提示額を決める手順は「中途採用の給与の決め方とは?企業が押さえるべきポイント」にまとめました。

給与レンジ設定のポイント

給与レンジを決めるときのポイントは、求人票の年収レンジの幅を等級の範囲の中で絞ること、市場の水準と比べる基準を企業規模まで含めて決めること、毎年見直す時期を決めておくことの3つです。

求人票に載せる年収レンジの幅

求人票の年収レンジの幅は、上限が下限の1.5倍以上2倍未満(幅50〜100%)を目安にできます。Offers に公開された正社員求人では、上限÷下限の中央値は1.67倍で、中央の半数は1.43〜2.00倍に収まりました。上限と下限の差の中央値は400万円です(Offers(株式会社overflow)調べ・年収の下限と上限を記載した正社員求人 n=3,311・2022年3月〜2026年10月公開)。

幅の区分ごとに見ると、幅50〜100%の求人が39.7%で最も多く、50%未満は28.9%、100%以上は31.4%でした。閲覧あたりの応募率は幅50〜100%の求人が最も高く、50〜100%を1.00とすると、50%未満は0.70倍、100%以上は0.64倍です。

幅の広い区分ほど下限の平均は低く、50%未満の617万円に対して、100%以上は513万円でした。幅の違いには年収の水準の違いも重なっているので、幅だけを変えれば応募が増えるとまでは読めません。

求人票の幅を決めるときは、採用で当てはめる等級を1つか2つに絞り、その等級の給与レンジの中で提示する範囲を書きます。2つの等級にまたがる場合に役立つのが、それぞれの等級で期待する役割を求人票に分けて書くことです。求職者は、自分がどちらの等級に当てはまるかを判断できます。

市場の水準と比べる基準

市場の水準と比べるときは、比べる相手の企業規模をそろえます。厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況」の企業規模別にみた賃金では、男女計・年齢計の賃金が次のとおりでした。

企業規模

賃金(月額・千円)

大企業を100とした格差

大企業(常用労働者1,000人以上)

385.1

100.0

中企業(100〜999人)

326.2

84.7

小企業(10〜99人)

305.6

79.4

全体の平均だけを基準にすると、大企業と採用を競う職種では中間額が低く出ます。採用で競う相手の規模と職種を決め、その水準に対して中間額を上に置くか、そろえるか、下に置くかを等級ごとに決めます。

中間額を市場より下に置く等級で欠かせないのが、給与以外の条件(担当する技術の範囲、働き方、評価の基準の公開など)を求人票に具体的に書くことです。

見直しの時期と方法

給与レンジは、毎年決まった時期に市場の水準と比べて見直します。同じ調査の役職別の賃金は、2025年に課長級・係長級で前年より3.4%増えました。市場の水準が動いた年に据え置くと、中間額は市場より低い位置へずれていきます。

見直しでは、レンジ全体を同じ率で引き上げるか、採用で競合が強い等級だけを動かすかを決めます。事業の拡大で新しい役割が増える年は、等級の定義と給与レンジを同じ時期に見直すのが効率的です。

見直した結果は、等級ごとの下限・中間額・上限と、昇格・昇給の決まりの2つに分けて社員に説明します。どの数字を開示するかは会社が決めることですが、自分の等級のレンジと、上の等級へ上がる条件が分かると、社員は昇給の見通しを立てられます。

給与レンジ設計の要点

給与レンジ(年収レンジ)の形を決めるのは、下限・中間額・上限の3つの値と、隣の等級との重なりです。

  • 中間額は、等級の役割に近い市場の水準に合わせて置く。公的統計の賃金は月額の所定内給与額なので、賞与を足して年収に直してから比べる
  • 幅は(上限−下限)÷下限で表す。幅を広くするほど等級の中で長く昇給させられるが、評価で差を説明する基準が要る
  • 開差型・接合型・重複型のどれを選んでも、昇格したときの給与の決め方を規程に書く
  • 求人票の年収レンジは、採用で当てはめる等級の範囲の中で絞る。Offers の正社員求人では上限÷下限の中央値が1.67倍だった
  • 毎年決まった時期に市場の水準と比べ、等級の定義と一緒に見直す

最初に手を付けるのは、今の社員の給与を等級ごとに並べ、下限と上限の外にいる社員が何人いるかを数えることです。人数が分かれば、レンジをどこに置くと人件費がどれだけ変わるかを見積もれます。

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