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自社の人材価値を向上させる施策として、タレントマネジメントが注目を集めています。タレントマネジメントは、現在の働き方に合った人材管理の手法です。この記事では、主にエンジニアを管理するためのタレントマネジメントの手法について解説します。
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タレントマネジメントの基本
(出典)https://unsplash.com/
IT人材の不足や働き方の多様化により、限られた人材の中で高いパフォーマンスを発揮することが求められています。これらの課題を解決するために注目されているのが「タレントマネジメント」という人材管理の手法です。
タレントマネジメントについて理解を深めるためにも、まずはタレントマネジメントの定義や人事管理との違いについて見ていきましょう。
タレントマネジメントの定義
タレントマネジメントとは、自社の従業員一人一人の才能やスキルを最大限に活用し、組織全体のパフォーマンスを向上させるためのマネジメント手法です。
優秀な人材の採用と選抜、適材適所への配置、マネジメントの改善を通し、自社にとって価値の高い人材を確保するための取り組みです。
人事管理との違い
タレントマネジメントが従業員一人ひとりに焦点を当てて育成するマネジメントの手法であるのに対し、人事管理は、組織全体の人員を管理するための業務を指します。
組織全体の人事施策や手続きに関する取り決め、従業員の待遇や採用基準の決定や勤怠管理などは、人事管理の業務です。ひと昔前の人事管理は、終身雇用制や年功序列を基軸にして内容が決定していましたが、タレントマネジメントは、個人の持つ能力や働き方に合わせた人材管理を行います。
タレントマネジメントが注目される背景
(出典)https://unsplash.com/
タレントマネジメントが注目されるようになった背景について、主にエンジニアの人材市場を中心にその要因を解説します。
IT人材の不足
2019年に行われた経済産業省が公表した調査結果によれば、2030年にはIT人材の需要と供給のギャップは、最大で約79万人に上るとの予測が出されています。
少子高齢化に伴う労働人口の不足と、AI技術の向上やDX化によるIT市場の拡大が主な要因です。エンジニア採用の需要に対して供給が追い付いておらず、採用自体が難しくなっています。
そのため企業としては、既に在籍しているエンジニアのパフォーマンスをどのように上げていくかが、重要な課題といえます。
タレントマネジメントは、この課題を解消するアプローチの一つとして用いられる機会が多くなっているのです。
長期雇用からジョブ型雇用へ
日本では新卒を一括採用し、終身雇用制や年功序列によって長期にわたって会社に勤めてもらう体制が主流でした。現在でも、そうした企業が多く残っています。
しかし、少子化によって新卒の一括採用が難しくなったり、終身雇用制の維持が難しくなっている企業が多くなったりしていることで、長期雇用が難しくなってきています。
このような現状に対して、エンジニア雇用では「ジョブ型雇用」が選択されるケースが増えています。ジョブ型雇用とは、職務内容を明確化し、あらかじめ期間や役職を定めて雇用するスタイルのことです。
ジョブ型雇用を活用するためには、人材の適切な評価や採用が必要となります。そこで、人材の価値を最大化するタレントマネジメントの手法が採られるようになってきているのです。
採用コストの削減
特にエンジニア採用においては、IT人材の不足や採用チャネルの多様化があり、応募者数の確保が難しくなっているだけでなく、採用決定までのリードタイムの長期化も懸念されています。
また、採用後の早期離職や、想定していたパフォーマンスを発揮できないといった採用後のミスマッチも大きな課題です。
タレントマネジメントの導入により、採用後のミスマッチを防ぐとともに、書類選考時点での候補者の選出もしやすくなるため、採用コストの削減に期待が持てるでしょう。
タレントマネジメントの目的
(出典)https://unsplash.com/
タレントマネジメントは何を目的として導入されるのでしょうか。主な目的は、以下の三つとなります。
人材の価値を最大化する
企業は労働力不足に対応すべく、自社人材の価値を最大限に活かしきることが求められています。
タレントマネジメントとは、従業員一人ひとりのスキルやパフォーマンスを可視化し、向上させることで人材の価値を最大化させることが目的の一つです。
キャリア成長とスキルアップ
エンジニアは売り手市場であり、優秀なエンジニアほど採用は困難です。エンジニアを確保するには、社内エンジニアの育成が、効果的な方法になります。
エンジニア一人一人に焦点を当てて、キャリアパスを明確化し、そのキャリアに到達するための課題と行動を示すことで、エンジニアの成長とスキルアップを促します。
その結果、社内業務の実行と企業文化によりマッチングしたエンジニア人材を獲得することが可能になるのです。
Employee Lifetime Value (ELTV) の最大化
タレントマネジメントを行うことで、社員一人一人に合った待遇や働き方を提供できます。その結果、社員の離職率が低下し、企業で長く働いてくれることに期待が持てるようになります。
社員が長期的に企業で働いてくれることで、採用コストの削減、優秀な人材を常に社内に確保しておくことが可能になります。
これにより、ELTV(従業員生涯価値)の最大化が見込めるでしょう。社員が長く働いてくれれば企業内熟練度も増し、より自社業務に最適化したスキルを持つ人材を確保しやすくなります。
タレントマネジメントの導入方法
(出典)https://unsplash.com/
タレントマネジメントをどのように導入すればよいのでしょうか。その具体的な手順を解説します。
目標と目的を明確化する
まずは、タレントマネジメントを導入する目的と目標を明確にしましょう。目的には、社員のスキルアップ、チームの生産性向上、社員満足度の向上などが考えられます。
目標設定が曖昧で結局何をすればいいのか、社員に明示できないケースもよくあります。そうならないために、まずは「何のためにタレントマネジメントを行うのか」「その目標はどこにあるのか」を明確にしましょう。
目標と目的は、企業のミッションやパーパスにあわせて設定することで、より成果を高めやすくなります。ステークホルダーとの対話やSWOT分析などを行い、企業の課題や事業を明確化した上で、目標と目的の設定を行いましょう。
組織全体の関与を促す
タレントマネジメントは、組織全体で行う必要があります。
評価制度の改善や採用活動の方向、人材配置の見直しなどの人事業務など、現場と経営クラスの課題と方向性を一致させることが不可欠のためです。
特にエンジニアの場合、育成には専門的なスキルが必要となり、そもそも社内にエンジニアをマネジメントできるPM(プロジェクトマネージャー)やEM(エンジニアリングマネージャー)の配置が不可欠となります。このポジションの人材を採用・配置するためには経営者や役員の協力が不可欠でしょう。
経営層が人材管理に無関心では、タレントマネジメントは成功しません。組織が一丸となって進めて行くことが必要です。
タレントマネジメントのフレームワークを設計する
タレントマネジメントを効果的に行うためのフレームワークを設計しましょう。これには、スキルズインベントリーの作成、評価基準の設定、育成プログラムの策定などが含まれます。
代表的なフレームワークを以下に紹介します。
ASTDのフレームワーク
米国人材開発機構「American Society for Training & Development」(略してASTD)が開発したフレームワークは、以下の八つに視点を置き、タレントマネジメントの運用を行います。
- 人材獲得
- キャリア開発
- 評価
- 後継者育成計画
- 組織開発
- 業績管理
- チームと個人の育成
- 人材定着
これら八つの要素をバランス良く評価し、育成していくことで長期的な視野でタレントマネジメントを行うためのフレームワークです。
9ブロック法
9ブロック(Nine Blocks)はアメリカのGeneral Electric社(ゼネラル・エレクトリック社、GE)が生み出した人材評価のための手法です。
達成した目標・業績を縦軸、企業が重視している価値基準であるバリューを横軸として、それぞれを3段階合計9つのブロックに区分します。業績が良く、企業の価値基準に沿っている従業員を高く評価します。
9ブロック法については、GEでは2016年に制度が廃止しました。とはいえ、今も日本でも活用している企業が多く、事例や情報も多いため、現役のタレントマネジメント手法といえるでしょう。
PDCAサイクル
PDCAとは「Plan(計画)」「Do(実行)」「Check(評価)」「Action(改善)」を一つのサイクルとして繰り返す、改善のための方法です。タレントマネジメントだけでなく、商品の改善や営業など、幅広い業務やフローで活用されています。
タレントマネジメントにおいても、PDCAサイクルは有効です。定期的な1on1や評価のフィードバックにこの手法を用いて、社員を適切に育成します。
タレントマネジメントプログラムの実施
設計した目的とフレームワークに基づいて、タレントマネジメントプログラムを実施します。実際にプログラムを実施するにあたっては、事前に以下の準備をしましょう。
- プログラムを実施する対象者を選択する。
- プログラムを実施する期間を決定する。
- 対象者ならび関係者に対し、情報共有や使用するツールの管理権限を設定する
準備を終えたら、いよいよ設計したプログラムを実施します。
成果のモニタリングと改善
タレントマネジメントの成果や進捗が、設定した目標に沿っているかをチェックし、必要であれば改善を施します。
このフローは、先ほど紹介したPDCAサイクルを活用するのがおすすめです。また、目標以外にも、参加者へのアンケートや、一定期間が経過したメンバーのパフォーマンスのチェック、参加者の所属するチームメンバーや上長からのフィードバックを受けるなど、多角的にモニタリングできるような仕組みを構築しましょう。
タレントマネジメントの成功事例
(出典)https://unsplash.com/
続いては、実際にタレントマネジメントを自社で成功させた事例について紹介します。
日産自動車
日産自動車では独自のタレントマネジメントプログラム「JBLP(Japan Business Leadership Development Program)」により、国内だけでなく海外でも活躍できるグローバルな人材育成に力を注いでいます。
そのビジョンを、日産自動車では「和魂多才」と定義しています。和魂とは、従来の日本人らしい「和」を大切にした柔軟性やチームワーク、「多才」は、多様性を持った人材がさまざまな環境で活躍することを指します。
このコンセプトに基づき、キャリアコーチと呼ばれる役割を持ったスタッフが、上記を実現できている社員の選抜や、システムの改善提案などを行っています。
学生から10年目の社員まで、長い期間で人材を育成するためのプログラムです。
サイバーエージェント
ユニークなHR施策の多いサイバーエージェントでも、タレントマネジメントは積極的に推進しています。その中でも、「GEPPO(ゲッポウ)」と「キャリアエージェント」について紹介します。
「GEPPO(ゲッポウ)」は、サイバーエージェントとリクルートの人材事業に関するためのツールで、従業員が毎月たった3問の質問に答えるだけで、組織と個人の課題を可視化することが可能です。
従業員のコンディションを把握するとともに、適切な部署や業務に配置できているかをチェックするのにも役立ちます。
この「GEPPO」の管理や、社内人材のヘッドハンティングを行っている組織が「キャリアエージェント」です。役員への人事提案や人材の抜てき、部署異動の提案などを行います。
このように、サイバーエージェントではタレントマネジメントを実施するためのシステムや制度づくりを積極的に行っています。
事業目標達成のために人的価値を高める
(出典)https://unsplash.com/
IT人材が不足している現在では、個々のエンジニアの価値をを高める施策が重要です。タレントマネジメントは、人材価値を高める手法として注目を集めています。
タレントマネジメントのやり方は、実施期間や対象者、目標によって変わってきます。これらの要素を明確化し、組織全体で関与しながらマネジメントを実施することで人材の価値を最大化し、組織の事業目標達成に大きく貢献できるでしょう。
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