エンジニア採用の面接官はどう決める?適性やスキル、面接官が押さえておくべきポイントを解説

Offers HR Magazine編集部 2023年4月20日

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採用のミスマッチが起こる要因の一つは、面接官の力不足です。エンジニア採用に関わる面接官には、どのような心構えやスキルが必要なのでしょうか?現職エンジニアの中から面接官を選出する際のポイントや事前準備の方法を解説します。

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採用面接官の役割

(出典)https://www.pexels.com/

企業のDX化に伴い、IT企業以外の中小企業でもITエンジニアを採用する動きが高まっています。

採用面接は、自社に合う人材を見極める重要な機会であり、優秀な人材を採用できるかどうかは面接官の手腕にかかっているといっても過言ではありません。エンジニアを採用するに当たり、面接官が果たすべき役割を明確にしておきましょう。

自社に合う人材かを判断する

面接官とは、企業の採用面接において、候補者に質疑応答をする人です。人事担当者が面接官の役割を担うケースもあれば、経営者や現場責任者、現職エンジニアが面接をするケースもあります。

面接官の役割の一つは、候補者が自社に合う人材かどうかを判断することです。スキルや実績は職務経歴書を見れば分かりますが、人格や思考特性、資質といった内面的要素を書類のみで見抜くのは困難です。

面接官は候補者に質問を重ね、「自社で活躍できる人材かどうか」「組織風土との相性はどうか」を見極める必要があります。

自社が魅力的であることをアピールする

面接官のもう一つの役割は、自社の魅力をアピールすることです。IT業界のエンジニアは売り手市場が続いており、企業間ではエンジニアをめぐる人材獲得競争が激しさを増しています。

優秀なエンジニアは他社からもオファーをもらっているため、企業側が積極的に魅力付けをしなければ、他社に流れてしまう可能性が高いでしょう。

面接は、会社と候補者が相互に評価し合う場です。エンジニアの採用に関しては、候補者に主導権があることを忘れずに、自社への入社意欲を高める工夫をしなければなりません。

エンジニア採用の面接官に求められる適性

(出典)https://www.pexels.com/

IT人材の採用に不慣れな企業では、内定辞退が相次いだり、採用のミスマッチが生じたりして、エンジニアの採用がうまくいかないケースがあります。

採用に失敗する理由はさまざまですが、主な要因として考えられるのは「面接官の力不足」です。エンジニア採用の面接官にはどのようなスキルが求められるのでしょうか?

エンジニアとしての技術と知識

エンジニアには、プログラミング言語・フレームワーク・データベース管理といったさまざまなスキルが求められます。

エンジニアとしての技術や知識がゼロの面接官は、候補者の技術レベルを的確に評価できません。人材の見極めと関係のない的外れな質問をしてしまったり、相手が納得できる説明ができなかったりして、候補者に不信感を与えてしまうケースがあります。

ひと口にエンジニアといっても、採用ポジションによって必要な経験やスキルが異なります。業務に対する理解が欠如していると、「なぜスキルのない人材を採用したのか」と現場から苦情が上がるかもしれません。「現場が求める技術レベルを有しているか」を確実に見極められる目が必要です。

コミュニケーション能力

エンジニアは、1人で黙々と作業をするイメージがありますが、システムの開発はチーム単位で行うのが基本です。互いに進捗を報告し合ったり、仕事の方針を擦り合わせたりと、コミュニケーションを必要とする場面は多くあります。

面接官は、候補者との対話やメッセージのやりとりなどを通じて、コミュニケーション能力の有無を見極めなければなりません。正しい評価をする上では、面接官自身にも高いコミュニケーション能力が求められます。

ここでいうコミュニケーション能力は、社交性や話のうまさとは関係がありません。適切な質問で候補者の本音を引き出す「質問力」や、相手に合わせた言葉選びができる「表現力」などが求められます。

候補者を分析する能力

人材の見極めには、分析能力が不可欠です。過去の経歴やスキルから入社後の活躍を正しく予測できなければ、採用のミスマッチが生じます。現場が混乱し、チームのモチベーションが下がる可能性もあるでしょう。

面接では候補者に質問を重ね、回答から適性や能力を探っていきます。話の内容はもちろん、話し方やしぐさからも、候補者の資質を把握する必要があります。

エンジニアの採用選考では、コーディングテストを実施するのが一般的です。コードの正確さに加え、思考回路や問題への向き合い方なども評価しなければなりません。分析能力に優れ、かつ一定のITスキルを有する者でなければ、面接官を務めるのは難しいでしょう。

将来を見据えた評価

エンジニア採用では、IT業界の最新技術やトレンドに詳しく、将来を見据えた評価ができる面接官が望ましいでしょう。

IT業界は技術革新のスピードが速く、常に進化し続けています。現時点で必要なスキルだけでなく、将来的に必要となるスキルをいかに見極められるかが鍵です。

経済産業省の資料によると、今後はシステム開発の需要が減少し、クラウド・ビッグデータ・IoT・AI・情報セキュリティに関連する需要が増えると予想されています。面接官は、新たな技術に対応できる人材を採用する必要があるでしょう。

出典:参考資料(IT人材育成の状況等について)|経済産業省 商務情報政策局 情報処理振興課

面接官を決める際の注意点

(出典)https://www.pexels.com/

面接官は、企業の採用活動におけるキーマンです。「候補者の見極め」と「自社の魅力付け」という大きな役割を背負うため、選定には慎重になる必要があります。面接官を決める際、どのような点に注意すべきなのでしょうか?

退職を考えていない人を選ぶ

面接官としての適性やスキルを備えていても、「退職を考えている人」に任せるのは好ましくありません。会社に対するエンゲージメントやモチベーションが低下しているときに面接官を任せると、そのまま本人の退職につながる可能性があるためです。

面接は、面接官が候補者を一方的に評価する場ではないため、候補者から面接官への「逆質問」されるケースも珍しくありません。

「なぜこの会社を選んだのですか?」「仕事のやりがいを教えてください」といった質問をされた場合、深く悩んでしまったり、候補者が納得できる回答ができなかったりする恐れがあるでしょう。

面接官には、自社の魅力を伝える使命があります。「会社から気持ちが離れている人」や「日常業務で疲弊している人」は、面接の担当から外すのがベターです。

対人コミュニケーションができる人を選ぶ

現場責任者や現職エンジニアを面接官に起用する際は、技術面の知識があるだけでなく、「対人コミュニケーション」がスムーズにできる人を選びましょう。

業務上の意思疎通が問題なくできることと、面接に必要な対人コミュニケーション能力を有していることはイコールではありません。対人コミュニケーション能力は、以下のような要素で構成されています。

  • 相手と信頼関係を築く能力
  • 相手の話を理解する能力
  • 自分の言いたいことを伝える能力

対人コミュニケーションが苦手な人を面接官に起用した場合、適切な質問や回答ができない可能性があります。候補者にも苦手意識が伝わってしまい、面接がスムーズに進みません。

面接を成功させるためにすること

(出典)https://www.pexels.com/

よい人材を採用するには、面接官本人のスキルだけに依存せず、適切な評価をするための仕組みづくりが重要です。面接を成功させるために、組織・チームがすべきことを解説します。

評価基準や合格ラインを共有する

採用面接を始める前に、評価基準や合格ラインを定め、面接官同士で共有を図りましょう。面接の結果には、多かれ少なかれ面接をする人の主観が影響します。例えば、面接官Aは候補者の論理的思考力を重視しているのに対し、面接官Bは協調性を重視しているとします。

評価基準が曖昧な場合、面接官ごとに評価が大きく異なり、候補者がなかなか絞り込めない状況に陥るでしょう。現場担当者からは、「なぜこの人を採用したのか?」という苦情が寄せられるかもしれません。

評価基準と合格ラインを設定・共有すれば、評価のブレが最小限に抑えられます。「ドタキャンをした人は選考から外す」などの基本的なルールも決めておきましょう。

採用活動自体を評価する仕組みを作る

採用活動は、人材を採用したら終わりではありません。優秀な人材を継続的に採用していけるように、自社の採用活動を評価する仕組みを作りましょう。

採用プロセスがうまくいった際は、どのような点がよかったのかをチームで共有します。フェーズごとに達成率を数値化し、採用活動の課題点を探る作業も欠かせません。

また、「エンジニアは本来の業務を優先し、採用活動に携わるべきではない」と考える上長がいる場合、人事担当者のみで面接を進めざるを得なくなります。

現場のエンジニアを巻き込みたい場合は、経営層や上長に働きかけ、同席を承認してもらいましょう。よい人材を確保するには、人事と現場の協力体制が不可欠です。

年齢制限を取り除く

ITエンジニアの採用を進める際は、年齢条件は設けない方がよいでしょう。「エンジニア35歳定年説」がささやかれた時期もありましたが、昔と今ではエンジニアを取り巻く環境が大きく変わっています。

当時は労働環境が整備されておらず、昼夜関係なく働き続けるエンジニアが多く見受けられました。体力的に限界を迎えるのが35歳前後だったため、採用に年齢制限を設ける企業が多かったと推察できます。

IT業界の慢性的な人手不足が続く中、年齢制限を設ければ、優秀なベテランエンジニアを逃すことになるでしょう。物覚えや知識の吸収でいえば、年齢が若い方が有利かもしれませんが、社会経験や業務知識が豊富なエンジニアは現場の即戦力となります。

ハロー効果を取り除くこと

人事担当者や面接官は、「ハロー効果」を取り除く努力をしましょう。ハロー効果とは、候補者を評価する際、その人の目立った特徴に影響を受けてしまうことを指します。

よくあるのが、「有名企業の出身だから優秀に違いない」というハロー効果です。「有名企業出身」という一面に引っ張られ、候補者の本当のスキルが見抜けなくなる恐れがあります。「経験〇年以上」「年齢〇歳以下」といった年数・年齢のハロー効果にも注意が必要でしょう。

ハロー効果を回避するには、以下のような対策が有効です。

  • ハロー効果に関する共通認識を持つ
  • 評価基準を明確にする
  • 複数の面接官で面接を行う
  • 実践に基づいたスキルテストを実施する
  • 面接官の事前研修を行う

面接官が面接までに準備すること

(出典)https://www.pexels.com/

面接官を決定した後は、面接に向けた具体的な準備を進めましょう。面接の準備は通常業務と並行して行うのが一般的なので、担当者は多忙を極めます。プロセスがスムーズに進むように、周囲はバックアップを心掛けましょう。

採用すべき人物像を把握する

採用のミスマッチを回避するためにも、面接官は自社が必要とする人物像を正しく把握する必要があります。現場責任者や現職エンジニアを交えながら、人材要件の詳細を設定しましょう。

就職経験のない新入社員は、社風や企業文化に比較的早くなじめますが、中途採用の場合は、企業文化と応募者の価値観がマッチしていることが重要です。

社風に合わない中途社員を採用すれば、周囲との不和が生じたり、モチベーションが低下したりするケースがあるため、カルチャーフィット度合いも人材要件の一つに加えましょう。

採用後の所属や働き方を想定する

人材要件を設定するだけでなく、採用後の所属や働き方をしっかりと想定しましょう。スキルだけを見て採用をすると、採用後に携わるプロジェクトや所属、役割などによって、人材がマッチしなくなる可能性があるためです。

また、特定のプロジェクトのみを想定して人材を採用した場合、プロジェクト終了後の扱いに困る恐れがあります。優秀なエンジニアを他社に奪われないためにも、長期的な計画に基づいた採用を行いましょう。

候補者のキャリアプランと会社が目指す方向性に大きなずれが生じないように、面接では「どんなエンジニアを目指しているのか」「将来は何がしたいのか」をヒアリングする必要があります。

採用候補者に合わせた質問を用意する

面接官の役割は、候補者に対して適切な質問をし、その回答からエンジニアとしての能力や人柄、自社とのマッチ度などを見極めることです。

質問はあらかじめ用意しておく必要がありますが、その場の状況に合わせて、質問の種類や聞き方を変えても構いません。

例えば、候補者自身の強みについて聞きたい場合、「あなたの強みは何ですか?」と聞くパターンもあれば、「上司はあなたをどう評価しましたか?」とも聞くパターンもあります。

本音が引き出せるかどうかは、面接官の質問力にかかっているといっても大げさではありません。マニュアル通りの質問を繰り返すのではなく、候補者に合わせた問いかけを心掛けましょう。

事前に研修を行っておく

現職エンジニアを面接官にする際は、事前に「面接官研修」を実施し、面接官としての最低限のスキルを身に付けておきましょう。

スキルが不足していると、候補者の志望度が下がったり、企業イメージが毀損したりといったマイナスの結果につながります。公正な採用選考を行うに当たっては、厚生労働省が提示する「就職差別につながる恐れのある質問」を把握しておく必要があります。

面接官研修では、以下のような基本知識を学びます。

  • 面接官の心構え(言葉遣い・マナー)
  • 面接全体の流れ
  • 質問・回答の仕方
  • 自社の魅力や特徴の伝え方
  • 評価基準に基づいた評価方法
  • タブーとなる質問
  • オンライン面接のマナー

座学を行った後、実際の面接を想定したロールプレイングをすると効果的です。社内での研修が難しい場合は、外部サービスを利用する手もあります。

出典:公正な採用選考の基本|厚生労働省

面接官はエンジニアを巻き込むことが重要

(出典)https://www.pexels.com/

エンジニアの採用に成功している企業の多くは、人事と現場が一体となって採用活動を行っています。

人事担当者だけでは、現場に必要な人材を的確に見極められない可能性が高いため、現場責任者や現職エンジニアを積極的に巻き込んでいきましょう。人材要件の定義や選考に現場が関わることで、採用のミスマッチが大幅に減少します。

面接官としてのスキルを身に付けるには、一定期間の研修・トレーニングが必要です。採用活動の計画を立てる際は、「面接官を育てる時間」を十分に確保しましょう。

優秀なエンジニアを採用する方法については、以下の記事でも解説しています。

優秀なエンジニアを採用する5つの採用方法をおすすめ度別に紹介。採用を成功させるポイントも解説 | Offers Magazine

参考文献

  • 久松剛「ITエンジニア採用とマネジメントのすべて「採用・定着・活躍」のポイントと内製化への道筋が1冊でわかる」かんき出版、2022、44-59頁

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