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稟議は、組織における意思決定方法の一つです。稟議書での承認作業により、事案ごとに会議を設ける必要がなくなります。そもそも稟議にはどのような役目や目的があるのでしょうか?メリットやデメリット、稟議書を作成するポイントを解説します。
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稟議の基本知識
(出典)https://unsplash.com/
組織では、自分だけの考えで物事を決定できない場面があります。自らに決定権がない事案については稟議書を作成し、社内稟議にかけるのが通例です。稟議制度の導入を検討している企業は、稟議の目的や仕組みについて理解を深めましょう。
稟議とは何か
稟議(りんぎ)とは、組織で所定の重要事項を決定する際、起案者が稟議書を作成して関係各所に回覧し、承認者の承認を得ることです。
- 起案者(申請者)→承認者A→承認者B→承認者C→決裁権者
具体的には、他社との取引契約・設備の導入・社員の採用など、「自分に決定権はないが、上層部を集めて会議を開くまでもない」という事案について、書面で承認を求めます。
稟議の稟には、「申し上げる」という意味があります。部下から上司に対する下意上達式の意思決定プロセスと捉えましょう。
社内稟議の種類
社内稟議にはさまざまな種類があり、内容や目的によって使い分けるのが一般的です。
- 購買稟議
- 契約稟議
- 採用稟議
- 接待交際稟議
「購買稟議」は、会社の経費で物品を購入する際に必要な稟議です。事務用品・文房具・パソコン・ITシステムなど、稟議の対象となる物品や金額は企業ごとに異なります。
「契約稟議」は、他社と取引契約を結ぶ際の稟議です。企業同士の取引では大きな金額が動くため、価格・条件・日程・期限・メリット・デメリットなどを記載した上で、関係者から承認を得なければなりません。
「採用稟議」は、人材採用に関わる稟議を指します。稟議のタイミングは主に、「新たに人材を採用するとき(募集のための稟議)」や「採用する人材が決定されたとき(入社のための稟議)」です。
「接待交際稟議」は、接待費の申請を行う際の稟議で、会食や贈答品の購入代金などが一定額を超える場合に必要です。
決裁との違い
稟議と間違えられやすいのが「決裁」です。決定権のある人(決裁権限者)に事案の採否を求める点では同じですが、そのプロセスは大きく異なります。
決裁は、決裁権者に直接承認をお願いするのに対し、稟議は各承認者の承認を得る必要があります。
担当者→係長→課長→部長といったように、役職の低い人から高い人へと順番に稟議書を回していき、最後に決裁権限者が目を通すのが一般的です。規模の大きな企業では、稟議と決裁が同時に行われるケースもあります。
稟議の必要性
(出典)https://unsplash.com/
決裁に比べて、稟議には時間や手間がかかります。一見すると非効率で、「稟議がない方がスムーズなのでは?」と感じる人もいるでしょう。しかし稟議のプロセスを経ることで、事案の組織的な管理が可能となります。
意思決定の透明性を高める
稟議には、意思決定の透明性を高める目的があります。稟議制度がない場合、意思決定は決裁権限者に委ねられます。内容の健全性や合理性、公平性が精査されないため、不正につながる可能性もゼロではありません
一方で、稟議書には意思決定のプロセスや内容が詳細に記されており、一定の透明性が担保されています。「契約書の価格は適正なのか」「本当に必要な経費なのか」などを、関係者全員が確認するため、偏りのない決定が可能です。
稟議にかける前に、起案者は承認者に提案書を提出した上で根回しをするのが通常です。稟議書は事前に取った合意の再確認であるともいえるでしょう。
情報共有の促進
稟議に際し、関係者には提案書や計画書、スケジュールなどが事前に提出されます。稟議では新たな意見や案が付記されることもあり、関係者の情報共有が促進されます。承認済みの稟議書は社内で保管されるため、類似事案が生じたときの参考にもなるでしょう。
稟議書の作成や承認作業にかかる手間を考えると、効率が悪いと感じるかもしれません。しかし、情報共有や再確認によって、認識の相違や情報共有の漏れがなくなり、重大なトラブルの防止につながります。
ミスを防ぐ
担当者や決裁権限者が独断で事案を進めた場合、判断ミスによるトラブルが生じる可能性があります。適正でない価格で取引契約を締結してしまったり、自社が求める人物とかけ離れた人材を採用してしまったりと、会社に大きな損失をもたらすことも珍しくありません。
稟議は、意思決定のミスを防ぐのに役立ちます。稟議の承認過程では、改善点や代替案などが上がります。関係者の意見によって事案が徐々にブラッシュアップされていくため、組織として最善の決定ができるでしょう。
稟議を導入するメリット
(出典)https://unsplash.com/
稟議は日本独自の制度です。稟議書の作成や回覧にやや手間はかかるものの、重要な意思決定プロセスとして多くの企業が採用しているのが実情です。稟議制度を導入すると、企業にはどのようなメリットがもたらされるのでしょうか?
会議コストを削減する
稟議制度がない場合、会議を開催して関係者から承認を得なければなりません。担当者は事前に人数分の資料を用意し、プレゼンテーションを行うのが通例です。検討事案が多くなればなるほど会議の準備に時間を取られ、個人の通常業務に支障を来す恐れがあるでしょう。
稟議を活用すると、会議が不要になります。稟議書の作成や根回しがスムーズにできれば、会議を開くよりも時間や手間がかかりません。人件費や資料の印刷費といった一連のコストが削減できる上、関係者のスケジュール調整に頭を悩ませずに済むでしょう。
会議の開催側はもちろん、出席する関係者にとっても、会議が少なくなるのはメリットです。
承認内容が記録として残る
稟議では承認内容が書面記録として残るため、いつでも過去の振り返りができるのがメリットです。判断に迷ったときは、関係各所の意見や改善点を参考にできるでしょう。
また、口頭説明では分かりにくい内容も、稟議書に書き起こすことで要点が相手に伝わりやすくなります。言った・言わないの水掛け論がなくなる上、時間が経ってからの再確認も容易です。
これまでは紙の稟議書が一般的でしたが、近年はシステムの導入による電子化が進んでいます。稟議書を電子化すると、閲覧や管理がグッと楽になるでしょう。
組織の動きが把握しやすくなる
組織の規模が大きくなればなるほど、部署ごとの業務内容や進行中の案件が見えにくくなります。特に、現場にほとんど顔を出す機会がない上層部は、今現場で何が起こっているのかを適切に把握できていないケースも珍しくありません。
稟議は下意上達式であるがゆえに、現場で動く従業員の現状や意見が反映されています。上層部は、稟議制度の導入によって組織活動がよく見えるようになり、改善のためのアクションやフィードバックがしやすくなるのがメリットです。
稟議のデメリット
(出典)https://unsplash.com/
ビジネスの現場では、スピード感が重視されます。システムやワークフローが構築されていない場合、稟議が煩わしく感じるかもしれません。これから導入を検討している企業は、稟議のデメリットや欠点も理解しておく必要があるでしょう。
承認までに時間がかかる
決裁と違い、稟議は承認までに時間がかかるのがデメリットです。起案者は前もって承認者に根回しをし、該当事案について事前に話を付けておかなければなりません。
稟議書の作成後は関係各所に稟議書を回し、承認者から承認をもらいます。出張で不在の日が続けば、承認スケジュールは遅延するでしょう。とりわけ、採用稟議や契約稟議はスピードが重要です。承認や決裁が1週間も長引けば、せっかくの好機を逃しかねません。
承認者への根回しを怠ると、背景や経緯の説明不足により、ダメ出しをされたり、却下されたりする可能性があります。会議のように関係者が一堂に会するわけではないため、それなりの時間がかかることを覚えておきましょう。
責任が曖昧になりやすい
関係者全員から承認を得る方式のため、稟議の成立は総意と見なされます。責任の所在が明らかな決裁に対し、稟議は責任が分散しやすく、承認者は重要事項を扱っているという自覚が薄れがちです。
承認された事案でトラブルが発生した場合、起案者は1人で問題を抱え込んでしまうかもしれません。一般的に、起案者は承認者よりも格下であるため、上司に対して責任を追及することは難しいでしょう。
精査を慎重に行ってもらうため、起案者は想定されるデメリットやリスクを明確に記す必要があります。
稟議承認のフロー
(出典)https://unsplash.com/
稟議書の作成から承認までの大まかなフローを解説します。意思決定がスムーズに行えるように、社内ルールで承認者や承認ルートを定めておきましょう。
なお、稟議には会社によって「条件付き決裁」や「差し戻し」「不承認」「否決」などの選択肢があり、必ずしも順調に決裁に至るとは限りません。
稟議書を作成し、関係者に送付
稟議に上げたい内容を整理した上で「稟議書」を作成します。書式やフォーマットは会社ごとに異なりますが、一般的には、以下のような事項を明記します。
- 件名
- 内容
- 必要な費用
- 申請の目的・理由・経緯
- 得られるメリット・リターン
- 想定されるデメリット・リスク
- 決裁区分(承認・条件付き承認・保留・差し戻し・否決など)
- 承認欄
- 申請日
- 決裁日
稟議書を番号で管理する場合は、承認者に回覧する前に「起案番号」を設定します。
承認者を決定し、承認を求める
稟議書を回覧する前に、どのような順番で誰の承認をもらうのかを決定します。承認者や承認ルートが曖昧だと、意思決定のスピードに影響が出る上、情報漏えいのリスクが増大するためです。
社内稟議には複数の種類があるため、申請の内容に応じて承認者と承認ルートを決めましょう。一般的に、役職や権限が低い人から順番に承認し、最後に決裁権限者の手元に届く流れです。承認ルートにはいくつかのパターンがあります。
- 直線型:指定されたルートに従い、直線的に承認・決裁が進む
- 並列型:複数ルートで承認フローが進む
- 条件分岐型:一定の条件や金額によって、承認ルートが変わる
並列型は、複数部署に関連する事案や大型プロジェクトで用いられるパターンです。条件分岐型では、「購入金額が〇円未満の場合は、係長が最終決裁」「〇円以上であれば、部長が最終決裁」といったように、あらかじめ条件を設定しておきます。
確認と承認
承認者は稟議書に目を通し、精査を行います。不明点または書類に不備があった場合は、「却下」や「取消」として起案者に差し戻しを行い、申請内容の修正や見直しを要求します。
稟議書には必ず「コメント欄」を設けましょう。理由なしに差し戻されると、起案者は検討のしようがありません。起案者は差し戻された内容を確認し、再申請を行います。承認者全員が承認すると、稟議書は決裁権限者の手元に渡ります。
決裁された稟議書は社内で保管が義務付けられるのが一般的です。保管期間は法律で決められていませんが、永久保存とするのが望ましいでしょう。稟議制度の導入にあたり、保管に関するルールも定めておく必要があります。
稟議を円滑に進めるポイント
(出典)https://unsplash.com/
稟議の欠点は、稟議書の作成や承認作業に時間がかかることです。意思決定の大幅な遅れは、企業全体の運営にも影響を及ぼします。少しでも稟議が円滑に進められるように、稟議フローのデジタル化やテンプレートの活用を検討しましょう。
稟議フローのデジタル化
近年は、政府がペーパーレス化やデジタル化を推進している背景もあり、稟議を円滑に進めるためのワークフローシステムを導入する企業が増加傾向にあります。
ワークフローシステムとは、稟議の一連のプロセスをデジタル化したものです。クラウド対応のシステムであれば、出張時やテレワーク時でも承認作業が滞りません。その他にも以下のようなメリットが享受できます。
- 稟議書の作成にかかるコストが抑えられる
- 回覧途中での紛失が防げる
- 承認の進捗状況が一目で分かる
- 承認ルートの自動化で人的ミスが減る
- 稟議書を保管するスペースが削減できる
- ファイリングや過去の稟議書の検索が容易になる
書き方のテンプレートを用意
起案者が書き方で迷わないように、内容別のテンプレートを用意しましょう。加えて、例文や書き方のルール、添付資料などを定めておくと、不備による差し戻しや口頭説明の手間が省けます。
テンプレートは部署ごとに用意するのではなく、全社共通が基本です。インターネットで公開されている無料のテンプレートを自社仕様にアレンジしてもよいでしょう。
ワークフローシステムを導入すると、会社独自の稟議書がスムーズに作成できます。「事案ごとにテンプレートを用意するのが面倒」「簡単な入力だけで作業を済ませたい」という場合は、デジタル化を検討しましょう。
稟議を効率化することで企業の意思決定速度を上げる
(出典)https://unsplash.com/
稟議は、意思決定の透明度を高め、社内の情報共有を促進します。案件ごとに会議を開催する必要がなくなり、時間のロスがなくなるでしょう。その一方で、稟議書の作成・回覧・承認がスムーズにいかず、本来のメリットが享受できない企業もあります。
ビジネスでは意思決定の速度が結果を左右するといっても過言ではありません。稟議制度を導入する際は、いかにプロセスを効率化するかを考えましょう。
\ エンジニア・デザイナー・PMの登録者20,000人超え! /
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