エンジニアの採用・育成で利用できる補助金や助成金は?代表例や申請方法を解説

Offers HR Magazine編集部 2024年2月15日

Offers HR Magazine編集部

目次

人材の採用にはある程度のコストが発生しますが、補助金や助成金が利用できる場合があり、費用負担を抑えられる可能性があります。エンジニアの採用でも利用できる補助金・助成金があるので、この機会にどのようなものがあるか確認しておきましょう。

エンジニアの採用・育成に使える補助金や助成金は?

企業の人材採用にかかる負担を軽減するため、国や地方自治体が補助金や助成金を用意している場合があります。うまく活用すればエンジニア採用で発生するコストを抑えられるので、利用を検討してみましょう。まずは、補助金・助成金の概要と主な種類を解説します。

そもそも補助金・助成金とは?

補助金とは、特定の事業や活動に対して国や地方自治体が直接的に資金提供をするものです。これには雇用の創出や新たな技術の開発、環境保護などの目的があり、対象となる企業の負担を減らすことを目指しています。条件に該当する企業が申請することで、原則として返済の必要がない資金援助を受けられます。

一方、助成金は、国や地方自治体からの資金援助の一形態であり、特定の社会的目的を達成するための活動に対して提供されます。助成金は補助金と比較して審査が緩やかで、より幅広い活動に対して支援が行われる傾向があります。補助金が特定のプロジェクトや規模の大きな事業に対して支給されることが多いのに対し、助成金は小規模な事業や地域社会の活動を支援するために利用されることが多く、対象となる事業者や団体の範囲が広いことが特徴です。

補助金や助成金の種類

企業の人材に関する補助金や助成金の種類としては、大きく分けて中途採用向けのものと、若者の採用に関するもの、さらに人材育成に関する助成金などがあります。

  • 中途採用向け:中途採用による雇用の拡大を図った際に得られるもので、具体的な給付額は採用の区分によって変わってくる。
  • 若者の採用向け:35歳以下の若手人材の採用に関する助成金。新卒採用や既卒採用、第二新卒の採用などに関して、条件を満たすことで支援を受けられる。
  • 人材育成や労働環境に関するもの:非正規雇用者を正社員にしたり、女性の活躍を支援したりなど。人材の登用・育成や労働環境の整備などで、特定の条件を満たす場合に支援を受けられる。

また、補助金や助成金を提供元で分類すると、経済産業省や厚生労働省が運用しているものと、各自治体が独自に設けているものがあります。人材の採用・育成に関しては、補助金よりも助成金の形態で提供されているものがほとんどです。

人材採用向けの補助金や助成金

それでは、エンジニア採用や育成にも利用できる補助金や助成金を具体的に紹介します。まずは中途採用や若手の採用など、人材採用に関する補助金・助成金の代表例です。

労働移動支援助成金

労働移動支援助成金は再就職を必要とする人や、離職を余儀なくされている人などを対象として、期間の定めのない労働者として雇い入れたり、就職支援をしたりする場合に支給される助成金です。「早期雇入れ支援コース」と「再就職支援コース」があります。

  • 早期雇入れ支援コース:雇用されていた会社への復帰見込みがない人材に対して、離職から3カ月以内に、無期雇用の社員として雇い入れた場合に受けられる。雇用する人材が離職の際に「再就職援助計画」や「求職活動支援書」の対象となっている必要がある。
  • 再就職支援コース:事業規模の縮小などの理由により、離職を余儀なくされる労働者に対して、再就職の支援をした場合に受けられる。

詳しい条件や受給額などは、厚生労働省の公式ページを確認してみましょう。

参考:労働移動支援助成金(早期雇入れ支援コース)|厚生労働省

中途採用拡大助成金

中途採用拡大助成金とは、中途採用に注力する企業を支援するもので、以下のコースがあります。 

  • 中途採用拡大コース(中途採用拡大助成):雇用管理制度を整備して、中途採用を進める事業主が対象
  • 中途採用拡大コース(生産性向上助成):中途採用拡大助成を受けた事業主で、一定期間後に生産性の向上が認められた場合が対象
  • UIJターンコース:東京圏からの移住者を雇用した事業主が対象

エンジニア採用でも、上記の受給条件に該当するケースもあるでしょう。コースによりますが、50万~100万円程度の助成を受けられる可能性があるので、条件を満たせるならば、積極的に利用しましょう。

参考:中途採用等支援助成金(中途採用拡大コース)|厚生労働省

特定求職者雇用開発助成金

特定求職者雇用開発助成金は、労働者を雇用する際に利用できる助成金です。一般的に就労が困難な人を雇い入れた場合に受けられるもので、次のコースが用意されています。

  • 特定就職困難者コース:特定就職困難者(高齢者や障害者など)を継続雇用する際に受けられる
  • 発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース:発達障害者や難治性疾患患者を雇用する際に受けられる
  • 就職氷河期世代安定雇用実現コース:就職氷河期とされる時期に就業できなかった労働者を、正規に雇用する場合に受けられる
  • 生活保護受給者等雇用開発コース:ハローワークや各地方自治体などから、通算して3カ月を超えて支援を受けている生活保護受給者や生活困窮者を継続的に雇用する場合に受けられる

それぞれ条件に該当すれば、エンジニアの採用でも問題なく申請が可能です。詳しい要件や助成額などは、コースごとに厚生労働省の公式サイトを確認してみましょう。

参考:特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)|厚生労働省

人材の試用を目的とした補助金や助成金

次に、人材の試用によって受けられる可能性のある補助金・助成金を紹介します。就業経験のない若者や障害者などをトライアル雇用した際に、助成金を利用できる可能性があるので、該当する可能性があるならば条件を確認するようにしましょう。

トライアル雇用助成金

トライアル雇用助成金はその名の通り、条件に当てはまる労働者を試用した際に利用できる助成金です。エンジニア採用の場合は、次のコースに該当する可能性があります。

  • 一般トライアルコース:就業経験不足や知識・スキルなどの理由から、安定した就業が困難な者を一定期間試用した場合に受けられる
  • 障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコース:就労経験がなかったり離職期間が長かったりする障害者を、一定期間雇用する場合に受けられる

参考:障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコース |厚生労働省

他にも建設事業主が若者や女性を雇用した際などに、受けられる助成金もあります。トライアル雇用に関する助成金についても、詳しくは厚生労働省の公式ページを確認してみましょう。

参考:トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)|厚生労働省

人材育成に関する補助金や助成金

続いて、人材の育成に関する補助金や助成金も紹介します。IT人材のスキルアップを図る場合に受けられる助成金があるので、エンジニアを採用・教育する場合には、必ずチェックしておきましょう。

人材開発支援助成金

人材開発支援助成金は事業主が労働者に対し、職務に関連した知識や技能を習得させるため、職業訓練やトレーニングなどを実施した際に受けられる助成金です。次の7つのコースがあります。

  • 人材育成支援コース
  • 教育訓練休暇等付与コース
  • 人への投資促進コース
  • 事業展開等リスキリング支援コース
  • 建設労働者認定訓練コース
  • 建設労働者技能実習コース
  • 障害者職業能力開発コース

エンジニアの育成では、主に「人材育成支援コース」「人への投資促進コース」「事業展開等リスキリング支援コース」のいずれかに該当する可能性があります。OJTとOff-JTなどの組み合わせにより、最大で2,500万円程度の助成を受けられる可能性もあるので、内容と要件を詳しく確認しておきましょう。

参考:人材開発支援助成金|厚生労働省

DXリスキリング助成金

DXリスキリング助成金は、東京都が都内の中小企業や個人事業主を対象に提供している助成金です。主に民間の教育機関によるDX関連の職業訓練に、社員を参加させた場合に経費の助成を受けられます。

例えば、プログラミングやUI/UXデザインに関するものや、AI(人工知能)やIoTなどに関する講座などが対象です。さらにネットワークやセキュリティー、データサイエンスなども講座でも助成を受けられる可能性があるので、エンジニアの育成におすすめです。

助成金の詳しい概要や申請の条件などは、東京しごと財団の公式ページを確認してください。

参考:令和5年度DXリスキリング助成金(中小企業人材スキルアップ支援事業)|東京しごと財団 雇用環境整備課

キャリアアップ助成金

キャリアアップ助成金は、雇用期間の定めのある者や派遣社員など、非正規雇用の労働者のキャリアアップを促進するための助成金です。正社員化に向けた取り組みを進めた企業や、社員の処遇の改善に注力した企業を対象として、現状では7つのコースが用意されています。

  • 正社員化コース
  • 障害者正社員化コース
  • 賃金規定等改定コース
  • 賃金規定等共通化コース
  • 賞与・退職金制度導入コース
  • 短時間労働者労働時間延長コース
  • 社会保険適用時処遇改善コース(新設)

条件や支給額はコースにより異なるので、厚生労働省やハローワークのページ確かめてみましょう。

参考:キャリアアップ助成金|厚生労働省

労働環境の整備に関する補助金や助成金

労働環境の整備や働き方改革に関しても、補助金や助成金を受けられる可能性があります。エンジニアの採用・育成でも環境整備は非常に重要な要素なので、ここでチェックしておきましょう。

人材確保等支援助成金

人材確保等支援助成金は自社を魅力ある職場にするため、労働環境の整備を進める事業主が、助成を受けられる制度です。労働環境の改善により、人材の確保と定着を図ることも目的としており、現状では以下のコースがあります。

  • 雇用管理制度助成コース
  • 介護福祉機器助成コース
  • 中小企業団体助成コース
  • 人事評価改善等助成コース
  • 建設キャリアアップシステム等普及促進コース
  • 若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース(建設分野)

ただし年度によっては受け付けを休止していたり、内容が変更になったりする可能性もあるので、定期的に内容を確認するようにしましょう。

参考:人材確保等支援助成金

両立支援等助成金

両立支援等助成金は、社員が働きながら育児・介護ができる制度の導入や、環境の整備に注力する企業が受け取れる助成金です。現状では「出生時両立支援コース」や「育児休業等支援コース」「育休中等業務代替支援コース」などがあります。

女性社員はもちろん男性社員が対象となるコースもあるので、うまく活用すれば、助成を受けながら社員のエンゲージメントを高める施策を実行できるでしょう。こちらも人材確保等支援助成金と同様に、年度によって内容が改正される可能性があるので、申請前によく調べておきましょう。

参考:両立支援等助成金|厚生労働省

補助金・助成金の申請はどうする?

補助金や助成金の申請をする際には、まず条件や受給できる金額などをよく調べておく必要があります。その上で、必要な書類を計画的にそろえておかなければいけません。最後に、補助金・助成金の申請に当たり準備すべきものや、申請の流れを簡単に解説します。

申請に当たり準備すべきもの

補助金や助成金の申請方法は、提出する機関によって変わってきます。準備すべき書類も内容によって異なりますが、一般的には以下の準備が必要です。

  • 被保険者資格取得の届け出
  • 雇用保険の支給要件確認申立書の提出
  • 受取人住所の届け出

申請準備に1〜2週間以上かかる場合もあるので、余裕を持って準備しておきましょう。詳しくは申請する補助金や、助成金の公式サイトを確認してください。

補助金・助成金の申請の流れ

一般的に補助金や助成金は以下の流れで申請します。

  1. 計画の策定
  2. 必要書類の作成・準備
  3. 計画の実行
  4. 申請書類の提出
  5. 書類審査
  6.  受給

まずは、どの補助金や助成金を受給するのかを決め、要件を満たすための計画を立てる必要があります。すでに要件を満たしている場合は、申請書類の作成や準備に入りましょう。

助成金によっては、人材の採用計画などの提出が必要なものもあり、計画通りに採用を実行することで、初めて申請が可能になる場合もあります。申請から審査・受給まで数カ月かかるケースも多く、申請期日も決まっているため、厚生労働省やハローワークの公式サイトをよく確認しておきましょう。

エンジニアの採用・育成にも補助金・助成金を活用しよう

エンジニア採用で利用できる補助金・助成金は多く、人材の採用や教育にかかるコストを抑えられるので、積極的に利用しましょう。中途採用から若手の採用、労働環境の整備に関する助成金など、さまざまなタイプがあります。

受給の要件を満たすのに手間がかかる場合もありますが、企業によってはすでに条件を満たしているケースも珍しくありません。まずは情報を収集し、どの補助金や助成金を狙うのがよいか検討してみましょう。申請から受給まで時間がかかる場合もあるので、早めに準備を進めることが大事です。

エンジニア・デザイナー・PMなどの開発組織の人材の採用や組織の作り方やトレンド・ノウハウに関する情報を定期的に配信しております。
ぜひ、メールマガジンにご登録ください!


採用・組織課題別お勧め記事


この記事をシェアする