エンジニア採用におけるタレントプールの構築方法やメリットを解説。タレントプールが注目される背景とは?

Offers HR Magazine編集部 2023年4月20日

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目次

売り手市場の傾向がますます加速していくエンジニアの市場では、人材管理の手段としてタレントプールを用いる企業が増えてきました。 タレントプールは企業が必要なタイミングとニーズに合わせて人材を確保することができる優れた仕組みです。この記事ではエンジニア採用におけるタレントプールの構築方法やメリットについて解説します。

エンジニア採用におけるタレントプール

(出典)https://www.pexels.com/

募集をかけたとしても、必要な人材がすぐに応募してくれるとは限りません。特にエンジニアの場合はスキルや雇用条件、プロジェクトの期間など細かい募集要項となってしまうため、採用の入り口が限られてしまいます。

こうした課題を解決するために、近年採用されているのが「タレントプールの構築」です。エンジニア採用においてタレントプールがどのような役割を果たすのでしょうか。

タレントプールは「人材のデータベース」

タレントプール(Talent Pool)という言葉が世に出たのは最近のことです。アメリカの大手経営コンサルファームマッキンゼー・アンド・カンパニーが2001年の人材獲得・育成の調査報告書「The War for Talent」で使用したのが最初とされます。

タレントは「人材」、プールは「貯蓄」を意味し、その名の通りタレントプールとは、会社にとって必要な人材を管理しておくためのデータベースのことです。

エンジニア採用でタレントプールが有効な理由

タレントプールは業種業界問わずに注目されている手法ですが、中でもエンジニア業界とは親和性が高い手法です。

WebアプリやSaaSの開発に携わるWebエンジニア、サーバーの運用や保守を担当するサーバーサイドエンジニアなど、エンジニアと一口に言っても多様な業種があります。さらに、 設計からプログラミングに取り組むプログラマーや、プロジェクト全体の指揮を執るPM(プロジェクトマネージャー)など、役割もさまざまです。

こうした課題の中で、自社が欲しているエンジニアをピンポイントで採用するのは難しい状況といえます。そればかりか、求めているスキルや役職によっては、 そもそも応募が来ないことさえありえます。

タレントプールを構築しておくことで、自社が求めている人材をデータベースの中から探し出し、すぐにアプローチができる状況を作れるのです。

なぜタレントプールが注目されているのか

(出典)https://unsplash.com/

タレントプールという概念が世に登場した2001年以降、タレントプールを構築する企業は増えています。タレントプールという手法に注目が集まる理由を紹介します。

優秀な人材を確保する手段として

近年では少子高齢化が進み、労働人口は減少の一途をたどっています。 特にエンジニアの人手不足は深刻化しており、 2030年には、IT人材は最大で約79万人も不足すると経済産業省が発表しています。

IT 人材需給に関する調査ー調査報告書|みずほ情報総研|

こうした背景もあり、エンジニアは現在売り手市場となっています。優秀なエンジニアはどの企業も欲しており、アプローチを持つこと自体が困難な状況になりつつあるのです。

タレントプールがあれば、優秀なエンジニアとのつながりを保つことができます。優秀な人材を自社で確保し、アプローチのしやすい状況を作れるという点が、現在の採用市場と合っているのです。

多様な働き方への対応

正社員のみにアジャストしていた昭和・平成の時代とは異なり、令和時代の人々の働き方は多様です。フリーランスや副業で働く人も少なくありません。

特にエンジニアは副業で働く人が多いため、正社員として1社にとどまってもらうより、案件に応じて業務委託契約を結ぶケースもよく見られます。

多様な働き方に対応していなければそもそも応募してくる人が限られてしまうため、複業やフリーランスの働き方を認める企業も増えてきているのです。

そうした中で、必要に応じて複数回のアプローチが行いやすいタレントプールは、多様な働き方への対応を可能にします。

タレントプールの対象となる人材

(出典)https://unsplash.com/

タレントプールが人材のデータベースとはいったものの、すべての人材を登録しておくわけではありません。将来的にアプローチを行う可能性の低い人材を登録しておくことは当然データベースを使いにくくしてしまいます。

それでは、どのような人材をタレントプールに登録しておくべきなのでしょうか。

マッチング度は高いが、入社には至らなかった人材

優秀な人材だったにもかかわらず入れるポジションがない、今回は採用を見送ったがタイミングが合えば積極的に採用したい、といったケースもあるでしょう。

そうしたあと一歩で採用に至らなかった人材は、社内メンバーの離職や異動、新規プロジェクトを立ち上げるといったタイミングで必要になることは十分あり得ます。

こうした「今回は入社を見送ったものの、いずれまた採用する可能性が高い人材」は、タレントプールに登録しておくべき人材といえます。

SNSなどでアプローチした潜在層も

TwitterやFacebook、LinkedinなどSNSによる採用活動を行っている企業もあるでしょう。こうしたSNS上のアプローチでつながった候補者に、タレントプールに登録してもらうのも効果的です。

SNSとタレントプールは相性の良い仕組みです。SNSによる採用活動は、中長期的な視点で行わなければならず、採用候補者との関係性の継続が求められます。

元々つながりのなかった採用候補者に対し、SNSでいきなり「うちの企業で正社員として働きませんか?」といったメッセージを送ったとしても、相手が警戒する可能性が高く、その候補者とのコミュニケーションをシャットアウトされたり、悪いうわさが広まったりすることもあり得るでしょう。

タレントプールに登録してもらい、自社に興味を持ってもらい、段階を踏んで魅力を知ってもらうといった活動にも役立つのです。

タレントプール構築のメリット

(出典)https://unsplash.com/

タレントプールを構築することで企業は次のようなメリットがあります。

  • 採用工数の削減
  • 適切な人材にアプローチができる
  • 自社にエンゲージメントが高い人材をアサインできる

各項目の内容について具体的に解説します。

採用工数の削減

タレントプールを構築するメリットとして大きいのは、採用工数とコストの削減です。

タレントプールには「すでに選考過程を経ており入社に至らなかった人材」や「自社側からアプローチした人材」が登録されています。

こうした人材にすぐにアプローチができるので、採用媒体に広告料を払って募集をかけたり、書類選考といった過程が不要となります。

適切な人材にアプローチができる

タレントプールには、企業が欲しているスキルや能力を持った魅力的な人材が多数登録しています。自社にとってマッチしやすいスキルを持った人材に対し適切にアプローチができます。

また、過去にプロジェクトへの参加経験がある人材や、選考過程を経た人材にアプローチをすれば、ミスマッチとなる可能性を下げることもできます。

自社にエンゲージメントが高い人材をアサインできる

タレントプールに登録している人材は、自社に対して興味関心を抱き、一緒に働きたいと思ってくれている可能性が高いです。

また、企業からの定期的な発信や情報収集を自ら行っている可能性も高く、通常の採用候補者よりも事業や案件への理解度が高い状態でアサインしてくれる期待が持てるでしょう。

タレントプールを活用するポイント

(出典)https://www.pexels.com/

タレントプールを採用する企業が増えている一方、タレントプールを使いこなせずに課題を抱えてしまっている企業も多くいるのが実情です。

少々古いデータになりますが、2018年に行われた株式会社scoutyの調査によれば、タレントプールを構築している企業のうち約半数ほどが「タレントプールを使いこなせていない」と回答していたことが分かっています。

使いこなせていないとして多く挙げられているのが、「アプローチのタイミングがわからない」「情報が古くなってしまっている」などでした。

せっかくタレントプールを構築しても、使いこなせなければ維持・管理にコストがかかるだけの負の遺産となってしまうでしょう。そうならないためにも、タレントプールを正しく活用するためのポイントについて解説します。

株式会社scouty:タレントプール利用企業の半数が「使いこなせていないけど運用し続けている」課題は「アプローチタイミング」と「情報のアップデート」~タレントプールの利用実態に関するアンケート調査~

対象となる人材の要件定義

タレントプール構築において、大きな失敗となってしまう要因は「登録人数が多くなりすぎてしまう」という点が挙げられます。

タレントプールの性質上「できるだけ多く人材が登録していればいい」と考えがちですが、これは誤りです。自社が望む人物像と適合せず、採用する見通しのない候補者が大量に登録されていると、いざアプローチをする際に本当に必要な人材が発掘できなくなってしまいます。

そこで、タレントプールを構築する際には、「どんな人が登録する場所なのか」要件定義を行いましょう。主な要件としては、以下のものが挙げられます。

  • スキル:最低限取得しておくべきスキル。プログラミング言語や資格など
  • 経験:就業経験や過去の実績
  • ポジション:マネージャー、コンサルタントなど

重要なのは「自社にとって必要な人材であること」です。優秀だとしてもマッチングしにくい要件は避けましょう。

データベースを構築する

データベースとは、「必要な情報を検索できるデータの貯蔵庫」です。候補者のデータを羅列しているだけでは、タレントプールとはいえません。

次のような項目を設けた上で、候補者に登録してもらいます。

  • 基本情報:氏名、性別、年齢、居住地、電話番号など
  • スキル:自身が扱えるプログラミング言語や資格など
  • 就業経験:過去の経歴や前職など
  • 現状に関して:転職意欲やすぐにアサイン可能かなど

ここで注意すべきは、各項目の中でもさらに、グループ分けがしやすいようにカテゴリーを設計することです。同じスキルを持っているにもかかわらず、書き方が違うために同じ検索結果に表示されないような事態は避けねばなりません。

また、個人情報の扱いについては十分注意しましょう。データベースにアクセスできる企業側の権限を制限したり、登録者に対しても情報をどのように扱うのかを周知します。

定期的にコミュニケーションを行う

タレントプール構築で意識したいのが「アクティブな候補者に登録してもらう」ということです。

すでに別の会社に転職が決まっており採用の見込みがない人材などを登録していても意味がありません。また、 登録だけしていて長期間何のアクションもしていないと、候補者のエンゲージメントも下がってしまいます。

そうならないためにも、候補者に対しては、定期的な情報発信を行ったり、企業側のイベントに招待したりといったコミュニケーションを取っておくと良いでしょう。

まとめ

タレントプールは、採用にかかる工数やコストを削減するだけでなく、自社に必要な人材を採用しやすい土台を構築するという役割を果たします。

特にエンジニアの場合、売り手市場であることやスキルが多様化していることから、適切な人材へのアプローチが難しい状況にあります。そうした状況下で、自社に必要な人材にアプローチがしやすいタレントプールは採用活動で大きな効果をもたらすでしょう。

一方で、タレントプールを使いこなせていない企業が多くあります。登録をしてもらったまま放置していたり、実際には採用できない非アクティブな候補者が多いような状況では、かえって採用活動の邪魔になってしまうことがあるので注意が必要です。

自社にとって欲しい人材は何かを明確にし、また登録者に対して自社からもアクションを起こす体制を作ることで、タレントプールは大きく貢献してくれるでしょう。

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