エンジニアの募集は、求人を出して応募を待つ方法と、企業から候補者を探しに行く方法に大きく分かれます。転職をまだ考えていない人の多い職種なので、待つ方法だけでは会える相手が限られるのが実情です。
募集方法ごとの向き・不向きと、2024年4月から変わった募集時の明示ルール、選考で成果を分けるポイントを、正社員の中途採用に絞って整理しました。
エンジニアの募集方法は5種類、待つ方法と探す方法に分かれる
エンジニアを正社員の中途採用で募集する方法は、求人広告、人材紹介(エージェント)、ダイレクトスカウト、リファラル採用、採用サイトと技術発信の5種類です。求人広告と採用サイトは応募を待つ方法、スカウトとリファラルは企業や社員から候補者に声をかける方法にあたります。人材紹介は、エージェントが候補者を探して推薦する点で両者の中間です。
1つに絞るより、採用したい人物像と社内で割ける工数に合わせて2〜3種類を組み合わせる企業が多く見られます。選ぶときの軸は「急ぎかどうか」「何人採用するか」「社内にエンジニアの目利きがいるか」の3つです。
募集方法 | 候補者との接点の作り方 | 費用の発生の仕方 | 向く場面 | 社内に要るもの |
|---|
求人広告(求人サイト) | 求人を掲載して応募を待つ | 掲載課金または成果報酬(媒体による) | 職種名で検索される求人、複数名の募集 | 求人票を書いて更新する人 |
人材紹介(エージェント) | エージェントが候補者を推薦する | 採用が決まったときの成功報酬が中心 | 急ぎの採用、非公開で進めたい募集 | 技術要件をエージェントに伝える人 |
ダイレクトスカウト | 企業がデータベースから候補者を選んで声をかける | 媒体の利用料金(定額や成果報酬など媒体による) | 転職を考え始める前の層に会いたいとき | プロフィールを読めて文面を書ける人 |
リファラル採用 | 社員が知人を紹介する | 紹介者への報酬など社内制度の費用 | カルチャーの合う人を少人数採用したいとき | 紹介を頼める社員と紹介の制度 |
採用サイト・技術発信 | 技術ブログや登壇で知ってもらい応募を受ける | 主に社内の工数 | 中長期で応募の母数を増やしたいとき | 発信を続ける現場のエンジニア |
雇用契約を結ばずに外部のエンジニアへ開発を頼む方法もありますが、募集の手順も法令上の扱いも正社員の募集とは別物です。ここでは正社員の中途採用の募集に絞ります。手法ごとの費用とコストの比べ方は「エンジニア採用手法の比較」で詳しく扱っています。
転職を考えていない層が多く、応募を待つだけでは届く範囲が狭い
求人広告や採用サイトで応募を待つ方法が届くのは、いま自分から求人を探している人だけです。Offers 登録者データ(株式会社overflow・2026年9月時点・n=31,649)で登録者の転職意向を見ると、「すぐ転職したい」は10.8%にとどまりました。「今は考えていない」47.5%と「良いオファーがあれば検討」31.4%を合わせた78.9%は、自分から求人を探していない層です。
同じ候補者を探す企業も多い状況が続いています。厚生労働省『労働経済動向調査(令和8年8月)』では、2026年8月1日現在の正社員等労働者過不足判断D.I.(「不足」と答えた事業所の割合から「過剰」を引いた値)が情報通信業で+52ポイントと、調査産業計の+47ポイントを上回りました。同調査の調査産業計(2026年4〜6月期実績)で、人手が足りない部門への対応内容は「中途採用の開始・拡大・強化」が66%で最多です。
中長期の見通しでよく引かれる「2030年に約79万人のIT人材が不足する」という数字には前提があります。経済産業省『IT人材需給に関する調査(概要)』(2019年3月)は、需要の伸びを年2.7%程度、労働生産性の上昇を年0.7%と置いた試算で、2030年の需給ギャップを約45万人としました。約79万人は、需要の伸びを年4.4%程度と高く置いたシナリオの2030年の需要(192万人)と供給(113万人)の差で、どちらの数字でも人材が足りない方向は変わりません。
このため、エンジニアの募集では、待つ方法に加えて、ダイレクトスカウトやリファラル採用のように企業や社員から声をかける方法を少なくとも1つ持っておくと、転職を考え始める前の層にも会えるようになります。
募集方法ごとの特徴と、エンジニア採用で向く場面
5種類の募集方法は、費用の発生の仕方と社内に要る人がそれぞれ違います。急ぎで1名を採用したいなら人材紹介、転職を考える前の層に会いたいならスカウトとリファラル、複数名を継続して採用するなら求人広告と採用サイトを軸にするのが、選び分けの目安です。
求人広告は自分から求人を探す転職顕在層に届く
求人広告は、求人サイトに求人を掲載して応募を待つ方法です。掲載してしまえば候補者対応以外の工数は比較的小さく、複数名をまとめて募集しやすい点が強みといえます。
届くのは自分から求人を検索する層に限られます。エンジニアは同時に多くの求人を比べるため、開発環境、技術スタック、任せる業務の範囲が書かれていない求人は、比較の段階で外されがちです。求人票の記載事項と書き方は「求人票とは?記載事項と食い違いを防ぐ書き方」にまとめています。
人材紹介は急ぎの採用と非公開の募集に向く
人材紹介は、エージェントが要件に合う候補者を探して推薦する方法です。初期費用がかからず、採用が決まったときに成功報酬を払う形が中心で、母集団づくりや日程調整を任せられます。競合に知られたくない新規事業の募集を、非公開で進めたいときにも使える方法です。
一方で、1名あたりの費用は他の方法より高くなりやすく、選考の知見が社内に残りにくい面もあります。推薦の精度はエージェントの担当者がエンジニアの技術要件をどこまで理解しているかで変わるため、同じ要件を複数社に伝えて推薦の質を比べると、自社に合うエージェントを見極めやすくなります。費用の相場と選び方は「エンジニア採用エージェントはいつ使う?」で扱いました。
ダイレクトスカウトは転職を考える前の層に会える
ダイレクトスカウトは、企業がスカウト媒体のデータベースから候補者を選び、直接メッセージを送る方法です。登録者の約8割が自分から求人を探していない以上、その層に企業から会いに行ける手段は、スカウトとリファラル採用の2つです。
Offers スカウトデータ(株式会社overflow・2025年3月〜2026年2月送信分・正社員求人・n=31,000)では、送信を100としたときの到達は開封59.7%、返信6.2%、面談2.9%で、面談1件を作るのに約35通のスカウトを要しました。開封した人の約9割が返信せずに終わるので、詰まりは開封ではなく返信の段に集中しています。
段階 | 送信を100としたときの到達 |
|---|
スカウト送信 | 100% |
開封 | 59.7% |
返信・メッセージ開始 | 6.2% |
面談 | 2.9% |
出典:Offers スカウトデータ(株式会社overflow・2025年3月〜2026年2月送信分・正社員求人・n=31,000)
スカウトでは、候補者のプロフィールや公開しているコードを読んで、自社が求めるスキルと合うかを見極める必要があります。現場のエンジニアが候補者選びか文面づくりのどちらかに加わる体制を作ると、返信の段の詰まりを減らしやすくなるはずです。仕組みと費用は「ダイレクトリクルーティングとは?」にまとめています。
リファラル採用はカルチャーの合う人を少人数採用したいときに向く
リファラル採用は、社員が知人を紹介する方法です。候補者は社内の実情を紹介者から聞いたうえで応募するため、入社後の認識のずれが起きにくく、職場にもなじみやすい傾向があります。
紹介の数は社内のエンジニアの人脈に左右されるため、エンジニアがまだいない企業では成り立ちにくい方法です。急ぎの採用や、特定スキルのピンポイントな採用にも向きません。報酬目当ての紹介を避けるには、紹介の手順と報酬の条件を規程にしておくことが前提です。制度の作り方は「リファラル採用とは?」で扱っています。
採用サイトと技術発信は中長期で応募の母数を増やす
採用サイトと技術発信は、技術ブログ、勉強会での登壇、ソースコードの公開などで自社の開発組織を知ってもらい、応募につなげる方法です。費用は主に社内の工数で、成果が出るまでに時間がかかるため、他の募集方法と並行して続けます。
スカウトを受けた候補者が会社名を検索したときに、開発体制や使っている技術が分かる情報が見つかるかどうかも、返信するかを決める材料の1つです。発信は単独の募集方法としてだけでなく、スカウトや人材紹介の後押しとしても働きます。
2024年4月から募集時に明示する労働条件が3項目増えた
2024年4月1日施行の改正職業安定法施行規則で、求人票や募集要項に明示する労働条件に「従事すべき業務の変更の範囲」「就業場所の変更の範囲」と、有期労働契約で募集する場合の「有期労働契約を更新する場合の基準(通算契約期間または更新回数の上限を含む)」の3項目が加わりました。
ハローワークへの求人の申込み、自社ホームページでの募集、求人広告の掲載のいずれでも、求人票や募集要項での明示が必要です(出典:厚生労働省「募集時などに明示すべき労働条件が追加されます!」2024年4月1日施行分のリーフレット)。
「変更の範囲」は、雇入れ直後の業務や就業場所だけでなく、将来の配置転換などの見込みも含めた、労働契約の期間中に変わりうる範囲を指します。同じリーフレットの記載例には「(雇入れ直後)法人営業(変更の範囲)製造業務を除く当社業務全般」のような書き方が載っています。
エンジニアの求人で押さえておきたい点は、次の3つです。
変更の範囲は、法令上の明示に加えて本文でも説明する。 候補者が知りたいのは、入社後にどの技術領域や職種へ移る可能性があるかです。想定している配置の範囲を、求人の本文でも具体的に書いておきます。
掲載した時点を書き、内容を最新に保つ。 募集広告などで情報を出す場合は、掲載した時点を明示するなど、正確かつ最新の内容に保つ義務があります。技術スタックやチーム構成が変わったら、求人票も合わせて直してください。
書ききれない条件は最初の接触までに伝える。 求人広告のスペースが足りないなどやむを得ない場合は、「詳細は面談時にお伝えします」などと付して一部を別に明示できます。その場合も、原則として面接など候補者と最初に接触する時点までに、すべての労働条件を明示しなければなりません。
求人票や採用サイトに載せている情報が、候補者から見て足りているかを確かめる方法の1つが、Offers の「エンジニア採用力チェック」です。企業のURLを入力すると、公開されている情報を5指標24項目で採点したレポートが原則1営業日以内に届きます。
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エンジニア採用を成功させる4つのポイント
募集で会えた候補者を採用につなげるには、現場のエンジニアを選考に入れる、評価の基準を面接の前に決める、求める人物像を技術の言葉で書く、入社後の環境とキャリアを示す、の4点を押さえます。4つとも、エンジニアのスキルは人事だけでは見極めにくいという同じ課題への手当てです。
現場のエンジニアが書類選考と面接に加わる
エンジニアのスキルは職務経歴書の言葉だけでは判断しにくく、人事だけで選考を進めると、現場が求める人物像とのずれが起きやすくなります。書類選考と技術面接に現場のエンジニアが加わり、スキルとチームへの合い方を見る役割を分けると、採用後のミスマッチを減らせます。
採用担当者の側にも、職種の呼び方と業務内容の対応、エンジニアのキャリアの考え方といった基礎知識が欠かせません。候補者の質問に一次回答できるだけの理解があれば、現場のエンジニアの負担も軽くなるでしょう。
評価の基準を面接の前に決め、経歴の印象に引きずられない
有名企業での職歴のような目立つ特徴に引きずられて、他の項目の評価までゆがむ認知バイアスを「ハロー効果」と呼びます。エンジニアの場合、学歴や資格、経験年数が実際のスキルを示すとは限らず、経歴の印象だけで評価すると入社後に期待とのずれが起きます。
評価する項目と、それぞれの項目で何ができれば合格とするかを、面接の前に面接官どうしで決めておくことが出発点です。技術課題やコードの説明など、実際のスキルを確かめる場面を選考に入れておくと、評価のぶれを抑えられます。
求める人物像を技術の言葉で具体的に書く
エンジニアと一口に言っても、担当する領域や使う技術は大きく異なります。「優秀なエンジニア」のような書き方では、候補者は自分が対象かどうかを判断できません。
使っている言語やフレームワーク、担当する範囲、チームの規模、入社後に任せたい課題を具体的に書くと、合う候補者は応募しやすくなり、合わない候補者は応募の前に判断できます。求人票やスカウト文面を書く前に、現場のエンジニアと人物像をすり合わせておくのが近道です。
入社後の開発環境とキャリアの道筋を示す
エンジニアが転職先を選ぶときは、仕事の内容に加えて、働く環境と成長の見通しも比べています。募集の段階で示しておきたい項目は次のとおりです。
- 待遇(賃金、就業規則、働き方の制度)
- 開発の現場(開発体制、ドキュメントの整備状況、使っている開発ツール)
- キャリアの道筋(評価制度、職種やポジションの移り方、学習・資格取得の支援)
採用を決めたあとは、なぜその人を採用したのか、何を任せるのかを既存のチームにも伝えておきます。外から入った人材と既存メンバーの役割が重なると、チームがうまく回らなくなることがあるためです。
Offers は正社員エンジニアの中途採用サービス
Offers は、株式会社overflowが運営する、エンジニアの正社員の中途採用に特化した採用サービスです。企業は登録しているエンジニアのプロフィールを見て、転職を考え始める前の層にもスカウトを送れます。前の節で紹介したスカウトの段階別通過率も、Offers 上の正社員求人に紐づくスカウトを集計したものです。
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