業務委託契約と雇用契約の違いとは?契約書作成時のポイントも

Offers HR Magazine編集部 2023年4月20日

Offers HR Magazine編集部

目次

エンジニアが活躍している企業の中には、副業従事者やフリーランスと業務委託契約を結ぶところが増えています。業務委託で仕事を依頼することで、大きな成果を上げている企業は少なくありません。業務委託契約の概要と雇用契約との違いを解説します。

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業務委託契約とは

(出典)https://www.pexels.com/

業務委託契約とは、業務の一部を外部の人材に任せる契約であり、エンジニアの活躍するIT業界でも、盛んに取り入れられています。まずは、業務委託契約の概要とメリットを解説していきます。

外部リソース活用の際に結ばれる契約の1形態

外部の人的リソースを活用する際に結ばれる代表的な契約が、業務委託契約です。請負契約や委任契約などの総称であり、会社と労働者が主従関係を結ぶのではなく、委託側と受託側が対等な立場で契約を結びます。

委託側の企業は、必要なタイミングで必要な期間のみ労働力を得られるので、人的コストを抑えながら特定の業務やプロジェクトなどをこなせるようになります。一方、受託側も副業や個人事業の一環として仕事を請けられるので、自分のライフスタイルやキャリアプランに応じて、柔軟に仕事ができるのがメリットです。

業務委託契約は、請負契約や委任・準委任契約の性格を有しています。2020年に民法が改正され、瑕疵担保責任がなくなり契約不適合責任が準用されるといったように、関連する規定がかなり変わっているので注意が必要です。契約時には該当する民法の規定を確認しておきましょう。

契約書を取り交わして契約を締結する

業務委託契約は、書面または電子契約書で締結します。法的には口約束でも契約は成立するとされていますが、後からいわゆる『言った・言わない』問題に発展する可能性があり、契約の解釈違いから業務の遂行に問題が発生する恐れもあります。裁判に至った際の証拠にもなるので、契約書は必ず取り交わしましょう。

契約書を書面で取り交わす場合、委託側・受託側の印鑑を押して、双方が1部ずつ持っておくのが一般的でした。ただし近年は電子契約も普及しており、印紙税や書面の郵送費がかからず、契約まで短いリードタイムで済むようになるので、積極的に導入するとよいでしょう。

電子データを取り扱うのでセキュリティー面に注意する必要はあるものの、書面の保管・管理が楽になり、類似書面データの作成も効率化できます。

業務委託のメリット

企業が業務委託を利用する最大のメリットとしては、必要なときのみ依頼ができる点です。

特にエンジニアはフリーランスも多く、近年は副業従事者や副業をしている人も多いため、一般的な採用プロセスを経ずに経験豊富な人材に仕事を任せられるようになります。さらに必要な期間のみ依頼できるので、長期的にみれば人件費を大幅に抑えられるでしょう。プロジェクト期間中のみ依頼するといったやり方も有効です。

また、自社で長く働いてもらいたい人材には、業務委託契約から正社員としての採用のオファーを出す方法もあります。スカウトメールの段階で、将来の正社員雇用を見据えて話をしておくのもよいでしょう。

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業務委託契約と雇用契約、派遣契約は何が違う?

(出典)https://www.pexels.com/

ここで、業務委託と一般採用(雇用)、派遣契約との違いを解説します。違いをよく理解しておかないと、契約をまとめる際に混乱する可能性があり、後からトラブルに発展するケースもあります。人事担当者でも違いが分からない人も多いため、しっかりと違いを押さえておきましょう。

雇用契約との違い

正社員や契約社員、アルバイトとしての雇用など、一般的な雇用契約は企業と労働者が主従関係にあり、企業側が労働者を管理・運用する権利を有します。原則として契約書を取り交わしますが、パートやアルバイトとして雇用する場合、雇用契約書を結ばないケースもみられます。

一方、業務委託契約は仕事の進め方や業務に充てる時間など、企業側から細かい指示は出せません。基本的に仕事の進め方は受託側の自由です。また、受託者は労働者として企業と主従関係を結ぶわけではなく、対等な立場として契約を結ぶので、労働法も適用されません。

派遣契約との違い

派遣契約とは、人材を必要としている企業が派遣会社と契約し、必要な人員を派遣してもらう方法です。派遣先の企業が労働者を直接雇用するわけではありませんが、派遣された社員の直接的な管理・指導ができます。こちらも業務の進め方や、勤務時間などを指定できない業務委託契約とは大きく異なります。

派遣スタッフを受け入れる場合は、基本的に派遣個別契約のみ締結すればよいので、年度末や業界特有の繁忙期など、一時的に人員が必要なタイミングでスムーズに人員の補充が可能です。業務委託に比べて満たすべき法定要件も少ないので、自社の規定に沿って人員を管理したい企業におすすめです。

業務委託契約は3種類

(出典)https://unsplash.com/

民法上、業務委託契約という契約の形態は規定されておらず、契約の性質によって、以下の『請負契約』『委任契約』『準委任契約』のいずれかに該当します。それぞれの特徴を知っておきましょう。

請負契約

請負契約は特定の業務を外部の人材に依頼し、その結果に応じて報酬を支払う形態です。社内の人員ではカバーできない専門分野の仕事を依頼したり、自社のコア業務に社内リソースを集中させたりする場合に、よく利用される契約です。

例えば、Web制作や広告の制作・運用、ライター業務などを外注する企業は珍しくありません。外部のエンジニアにシステムの開発や運用を任せる企業も多くあります。特にソフトウエア開発では、開発フェーズごとに専門のエンジニアと請負契約を結ぶケースがよくみられます。

委任契約

委任契約とは法律行為を伴う業務の遂行を、外部の人材に依頼する形態です。あらかじめ定めた期間内で業務を委任する方法で、仕事を請け負った者は当該期間中に依頼された業務をこなして、報酬を受け取ります。請負契約のように、成果物を完成させる必要はありません。

委任契約の代表例としては、弁護士や税理士など、特定の資格を有するものでなければ遂行できない業務の外注です。法律行為を伴う業務以外の仕事は、後述する準委任契約にあたるので、エンジニアと委任契約を結ぶことはまずありません。

準委任契約

準委任契約は、法律行為を伴う業務以外を依頼する委任契約です。例えば、コンサルティングやリサーチ業務などが挙げられます。エンジニアの活躍する領域であるシステムの保守・運用も、代表的な準委任契約が結ばれる事例の一つです。

特に駐在型の作業で契約するケースが多く、エンジニアの場合は、要件定義からユーザーテストまで、開発の各フェーズで個別に準委任契約が結ばれるケースが目立ちます。法律行為を伴って委任契約と同様、契約した業務の完了にともに契約も終了します。

業務委託契約の特徴

(出典)https://unsplash.com/

業務委託契約を結ぶ際、特に注意すべき特徴を挙げておきます。一般的な雇用契約と混同しないように注意しましょう。業務を請け負った者に対して、企業ができること・できないことを理解する必要があります。

業務プロセスの細かな指示などができない

業務委託契約と一般雇用契約・派遣契約との違いで説明したように、業務委託契約では受託者に対して、業務プロセスの細かな指示はできません。原則として、仕事のやり方・進め方は受託者が自由に決められます。

フリーランスや副業従事者と業務委託契約を締結している企業の中には、仕事の細かい進め方に関して、指揮・命令をするケースも見受けられますが、その場合は業務委託契約ではなく一般雇用契約とみなされる可能性があるので注意しましょう。

業務委託契約では委託側・受託側は対等な立場なので、あたかも主従関係があるかのように指揮・命令はできません。

労働時間・場所の指定も不可

依頼した業務の進め方に加えて、業務委託契約では受託者の作業時間や作業場所の指定もできません。毎日、どのぐらいの時間を仕事に充てるか、どの場所で仕事をするかも受託者の自由です。業務上の細かい指示や労働時間・場所の指定をしてしまうと、いわゆる偽装請負とみなされる可能性があります。

社内の就業規則を副業従事者やフリーランスに準用しようとする企業担当者は、決して少なくないのが実態です。しかし、その場合は雇用契約とみなされて、業務委託契約と一般雇用契約との差を埋め合わせる義務が生じるので、混同しないように注意しなければいけません。

一般雇用契約とみなされると、未払い残業代の支払いや有給休暇の付与義務などが発生する可能性があります。

準委任契約は2パターンに分けられる

(出典)https://www.pexels.com/

エンジニアの業務委託契約に多い『準委任契約』は、2020年の民法改正で以下の2パターンに分類、定義されました。エンジニアと契約を結ぶ予定の企業は、それぞれのパターンをよく理解しておきましょう。

作業に対して報酬を支払う「履行割合型」

履行割合型とは、受託者の労務の対価として報酬を支払うタイプです。例えば、情報の入力業務や会計処理などの事務作業を準委任契約として外注する場合、受託者の作業時間や作業量に応じて、報酬を支払います。

改正前の民法では、委任契約が期間の満了を待たずに終了した場合、受託者に責任がない範囲において、履行部分の割合に応じた報酬の支払いをする決まりでした。しかし改正民法では、受託者の契約業務に関する責任の有無にかかわらず、履行割合に応じた報酬を支払う必要があります。

成果に対して報酬を支払う「成果完成型」

成果完成型はその名の通り、成果物の対価として報酬を支払うタイプです。いわゆる成功報酬として捉えられる向きがありましたが、2020年の改正民法によって規定が変わっています。

成果完成型の契約であっても、成果物の完成ができなくなった場合や途中で契約が解除になった場合において、その成果物によって委託側が受ける利益の割り当てに応じて、受託者が報酬を請求できるようになりました。従って、成果物が完成していないからといって、報酬の支払いの拒否はできません。

業務委託契約書の内容

(出典)https://unsplash.com/

それでは、業務委託契約書の内容を解説します。必要な項目を理解した上で、実際の契約に備えてひな形を作成しておくと便利です。

準委任契約の場合

準委任契約の契約書には、次の項目を盛り込みます。

  • 委託する業務の目的や内容
  • 契約期間
  • 委託料(報酬)
  • 善管注意義務について
  • 再委任の禁止や条件
  • 契約に関する権利義務の譲渡の禁止
  • 秘密保持の規定
  • 契約解除となる事由や条件
  • 損害賠償に関する規定
  • 紛争処理について

業務の目的や内容・契約期間・報酬などは当然ながら、契約に盛り込まなければいけません。加えて、秘密保持に関する内容や、契約解除となる事由などの規定が必要です。

また、善管注意義務とは受託者の職種や専門家としての能力、スキルを考慮した場合に、通常期待される注意義務を指します。エンジニアの場合は、システム開発や保守・運用などの専門家として、一般的に考えられる履行義務を果たすとみなされるでしょう。

万が一、受託者とトラブルになった際の紛争処理に関する決め事も必要です。通常は紛争を裁判によって解決する旨と、管轄する裁判所を規定します。

請負契約の場合

請負契約の契約書には、次の項目を盛り込みましょう。

  • 請負契約の目的と内容
  • 請負期間
  • 請負料と支払方法
  • 成果物の権利帰属先(通常は委託側に設定)
  • 報告義務について
  • 秘密保持について
  • 契約解除となる事由・条件
  • 契約に定めない事項に関して

まずは請負契約の目的や内容、請負料金を規定しましょう。何のために請負契約を結ぶのか、目的をしっかりと明記することが大事です。また、成果物の権利が委託側に帰属する旨や、委託側が受託側に対して、業務に関する情報を報告する義務がある点も明記しましょう。

さらに委任契約と同様、秘密保持契約や契約解除となる事由や条件も規定しましょう。契約に定めない事項に関しては、委託側・受託側の双方の話し合いで決める旨の規定をするのも一般的です。

まとめ

業務委託契約の概要とメリット、雇用契約や派遣契約との違いを解説しました。業務委託契約は必要な期間のみ外部の専門職に業務を依頼できるので、自社に専門知識がない分野の業務や、コア業務に社内のリソースを集中したい場合などに有効です。

ただし、委託側から業務プロセスの指定や作業時間・作業場所などの指定はできないので、一般雇用契約と混同しないように注意が必要です。業務の内容や期間、報酬などを明記した上で、しっかりと契約書を取り交わす必要があります。事前に契約書のひな形を作成しておき、内容に抜けや漏れがないかチェックしておきましょう。

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