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国や公共団体では、エンジニアの育成に活用できる助成金を用意しています。中小企業に手厚い制度が多く、資金面が問題で育成が十分に行えなかった企業は、より質の良い訓練を実施できるようになるでしょう。主な助成金の種類と受給要件を解説します。
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エンジニアの育成に使える助成金とは?
(出典)https://www.pexels.com/
助成金とは、国や公共団体などが特定の政策に基づいて支給するお金です。一定の要件を満たし、審査をクリアした事業者は、あらかじめ決められた金額を受け取れます。
お金の貸し付けと異なり、助成金のほとんどは返還の必要がありません。エンジニアの育成を目的とした助成金制度はあるのでしょうか?
IT研修で活用できる助成金は多い
エンジニアの育成だけに特化した制度はありませんが、IT研修に関連する助成金は多く、上手に活用すればエンジニアの研修コストを抑えられます。
- 人材開発支援助成金
- 社内型・民間派遣型スキルアップ助成金
- オンラインスキルアップ助成金
- DXリスキリング助成金
- 非正規雇用労働者のキャリアアップに関する助成金
各種助成金には、申請条件があります。条件や助成金の上限を確認した上で、自社のエンジニア育成に活用できそうかどうかをチェックしましょう。
助成金を利用する際の注意点
「助成金が出るから使わないと損」と考える企業も多いですが、助成金ありきの人材育成は、思うような成果が得られません。
助成金を申請する前に、エンジニアの育成課題を把握し、明確なゴールを設定することが重要です。「どのようなスキルを習得するのか」「育成によって自社にもたらされる価値は何か」をしっかりと踏まえながら、綿密な育成計画を立てましょう。
エンジニアの育成においては、社内研修のほか、外部の育成サービスや教育プログラムを活用するのが一般的です。自社で活用しようとしているサービスが必ずしも助成金の対象とは限らない点に注意が必要です。
人材開発支援助成金
(出典)https://www.pexels.com/
「人材開発支援助成金」は、従業員の人材育成やスキルアップに活用できます。目的の異なる複数の訓練コースがあり、それぞれに異なる要件や助成金額が設けられています。
制度の概要
人材開発支援助成金は、職務に関連する職業訓練を計画に沿って実施した際に支給される助成金です。一定の要件を満たした場合、訓練期間中の訓練経費や賃金の一部が助成金として支給されます。
本制度を利用すれば、最低限の負担で訓練や研修を実施できます。対象となるコースは全部で7種類あり、正規雇用労働者だけでなく、非正規雇用労働者を対象とした訓練も含まれているのが特徴です。
人材開発支援助成金のコース
2023年4月に制度内容が見直され、コースの統合が行われました。現在、助成金の対象となるコースは、以下の7種類です。
- 人材育成支援コース
- 教育訓練休暇等付与コース
- 人への投資促進コース
- 事業展開等リスキリング支援コース
- 建設労働者認定訓練コース
- 建設労働者技能実習コース
- 障害者職業能力開発コース
エンジニアの育成と関連性が深いのは、「人材育成支援コース」と「人への投資促進コース」です。
人材育成支援コースは、「OFF-JTにより職務上の知識・技能を習得させる訓練」や「厚生労働大臣の認定を受けたOJT付き訓練」「正社員化を目指す訓練」が対象です。
人への投資促進コースは、2022年4月に新設されたコースで、「高度デジタル人材訓練/成長分野等人材訓練」や「情報技術分野認定実習併用職業訓練」といったIT・デジタル成長分野に関連する訓練が含まれています。
出典:人材開発支援助成金人への投資促進コースのご案内(詳細版)
助成金の受給要件
助成金を受給できる事業主は、雇用保険適用事業所です。支給を決定するための審査に協力し、かつ管轄労働局などの実地調査を受け入れる必要があります。
過去に不支給が決定されていたり、支給決定の取り消しを受けたりしている場合、支給決定取消日から5年を経過していないと受給はできません。
各コースには、それぞれの受給要件やルールが設けられています。対象となる労働者・訓練・経費をあらかじめ確認した上で申請を行いましょう。
社内型・民間派遣型スキルアップ助成金
(出典)https://www.pexels.com/
東京に本社・事業所の登記がある企業は、「社内型・民間派遣型スキルアップ助成金」を活用しましょう。公益財団法人東京しごと財団が実施する助成金制度で、一部はオンライン訓練も対象です。
制度の概要
社内型・民間派遣型スキルアップ助成金は、都内の中小企業や団体などが実施する短時間の職業訓練に対する助成金です。要件を満たす場合、訓練に要した経費が助成されます(上限あり)。
「社内型スキルアップ助成金」と「民間派遣型スキルアップ助成金」の2種類があり、どちらも通常の業務と区別できるOFF-JTの集合型訓練でなければなりません。
社内型スキルアップ助成金 | 民間派遣型スキルアップ助成金 | |
訓練時間 | 3時間以上12時間未満 | 3時間以上20時間未満 |
訓練場所 | 東京都内 | 東京都内 |
訓練期間 | 交付決定日から2024年3月31日までの間に訓練を開始し、2024年8月31日までに終了する | |
修了者数 | 2名以上 | 1名以上 |
社内型スキルアップ助成金については、同時かつ双方向のオンライン訓練も対象です。
出典:社内型スキルアップ助成金・民間派遣型スキルアップ助成金 | 東京しごと財団 雇用環境整備課
助成金の受給要件や支給
助成金の対象となる事業者は、東京都内に本社または事業所の登記がある中小企業・個人事業主・団体です。
中小企業は、資本金の額や常時使用する従業員数に要件があります。例えば、小売業・飲食店・サービス業・卸売業以外の場合、「資本金の額が3億円以下」「常時使用する従業員数が300人以下」のいずれか(または両方)に該当する企業が対象です。
助成金の支給額および上限額は以下の通りです。詳しくは募集要項を確認しましょう。
社内型スキルアップ助成金 | 民間派遣型スキルアップ助成金 | |
助成金額 | 助成対象受講者数×訓練時間数×730円 | 助成対象受講者1人1コース当たり受講料など(税抜き)の1/2 ※非正規雇用労働者が全体の受講者の2割以上参加した場合は2/3 |
上限 | 団体の場合、訓練に要した経費-収入の額を上限とする | 2万5,000円 |
出典:令和5年度 社内型スキルアップ助成金・民間派遣型スキルアップ助成金 募集要項
オンラインスキルアップ助成金
(出典)https://www.pexels.com/
オンラインスキルアップ助成金は、公益財団法人東京しごと財団が実施しています。東京都内の中小企業・小規模企業者・団体が対象で、助成対象受講者には、非正規雇用の従業員も含まれます(ただし、助成金を申請する企業との雇用契約を結んでいない派遣労働者は、助成対象外です)。
制度の概要
中小企業や小規模企業者などが、従業員に対してeラーニングを利用した職業訓練を行った場合、訓練に要した経費(受講料や登録料など)が助成されます。訓練の要件は以下の通りです。
- 受講者の職業・職務に関連して、知識・技能の習得、または資格の取得を目的とする訓練であること
- 受講者の受講履歴を確認できること
- 教育機関の受講案内および受講料が一般に公開されていること
助成対象となる訓練には、オンライン会議システムを使用した訓練も含まれます。
出典:令和5年度オンラインスキルアップ助成金(中小企業人材スキルアップ支援事業) | 東京しごと財団 雇用環境整備課
助成金の受給要件や支給額
助成金は、「対象訓練の経費を従業員に負担させていないこと」および「国や地方公共団体から助成を受けていないこと」が前提です。
東京都に本社や事務所の登記がある中小企業・小規模企業者・団体が対象で、企業には資本金の額や常時使用する従業員数についての要件が定められています。
助成額および助成限度額は、事業者区分ごとに異なります。助成対象受講者や助成対象経費の詳細は、募集要項を確認しましょう。
事業者区分 | 助成額 | 上限額 |
小規模企業者 | 助成対象経費の2/3 | 27万円 |
その他の中小企業など | 助成対象経費の1/2 | 20万円 |
中小企業などのうち、非正規雇用労働者が受講者全体の2割以上参加した場合 | 助成対象経費の2/3 | 27万円 |
出典:令和5年度 社内型スキルアップ助成金・民間派遣型スキルアップ助成金 募集要項
DXリスキリング助成金
(出典)https://www.pexels.com/
企業のDXが推進される中、社内に高度なデジタル技術を扱えるデジタル人材がおらず、DXが前に進まない企業も少なくありません。DXリスキリング助成金は、公益財団法人東京しごと財団が実施する助成金で、東京都内の中小企業や個人事業主が対象です。
制度の概要
DXリスキリング助成金とは、外部講師を招いてDXに関する民間の職業訓練やeラーニング、オンライン会議システムを使用した訓練を実施した際に、かかった経費の一部を助成するものです。
具体的な訓練内容としては、AI・UXデザイン・経営戦略・プログラミング言語・RPA・データサイエンスなどが挙げられます。
「DXに関する専門的な知識・技能の習得・向上を目的とすること」または「資格の取得をするための訓練であること」が前提で、講座は「単講座」と「オーダーメイド講座」のいずれかの形式を選択します。それぞれの要件と訓練時間は以下の通りです。
単講座 | オーダーメイド講座 | |
講座の要件 | 受講内容や料金が一般公開されており、かつ1講座・受講者1人当たりの受講料があらかじめ決められている | 自社内に外部講師を招いて実施するもので、1時間当たり10万円以内である |
訓練時間 | 20時間以上(複数の組み合わせも可能) | 6時間以上 |
助成対象経費 | 受講料・教科書代・教材費・ID登録料など |
出典:令和5年度DXリスキリング助成金(中小企業人材スキルアップ支援事業) | 東京しごと財団 雇用環境整備課
助成金の受給要件や支給額
助成金は、東京都内に本社・事業所の登記がある中小企業または個人事業主のみが受けられます。申請の要件は、「訓練に要する経費を従業員に負担させていないこと」「国や地方公共団体から助成を受けていないこと」です。
資本金の額(または出資の額)や常時使用する従業員数に要件があり、小売業・飲食店 ・サービス業・卸売業以外の産業では、「資本金の額が3億円以下」「常時使用する従業員数300人以下」のいずれか(または両方)に該当する必要があります。
助成金の額および助成度額は以下の通りです。申請期間や申請の流れについては、募集要項を確認しましょう。
- 助成金額:助成対象経費の2/3
- 助成上限:1社につき64万円/年度
キャリアアップ助成金も活用しよう
(出典)https://www.pexels.com/
非正規雇用のエンジニアがいる場合、キャリアアップを促進するための「キャリアアップ助成金」が活用できるケースがあります。申請時に「キャリアアップ計画」を作成・提出する必要があるため、経営層や現場責任者との連携は欠かせません。
非正規雇用労働者のキャリアアップに関する助成金
キャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者のキャリアアップに関する助成金で、厚生労働省が主体です。正社員化や処遇改善の取り組みを実施した事業主に対し、あらかじめ定められた助成金が支給されます。
計6種類のコースがあり、コースごとに要件や助成額が異なります。
<正社員化支援>
- 正社員化コース
- 障害者正社員化コース
<処遇改善支援>
- 賃金規定等改定コース
- 賃金規定等共通化コース
- 賞与・退職金制度導入コース
- 短時間労働者労働時間延長コース
正社員化コースは、非正規雇用者を正社員化した際に支給される助成金です。雇用形態が有期雇用労働者だった場合、1人当たり57万円が助成されます(中小企業のケース)。
正社員化コース分割版 キャリアアップ助成金のご案内(令和5年度版)
キャリアアップ計画の作成・提出が必要
助成金を受けるには、キャリアアップ管理者を選任した上で、キャリアアップ計画書を作成しなければなりません。計画期間は3年以上5年以内で、以下の内容を明記します。
- 計画対象者
- 目標
- 期間
- 目標を達成するために事業主が行う取り組み
計画対象者が所属する部署のみで完結させるのではなく、有期雇用労働者などを含む事業所の全ての労働者の代表から意見を聴き取る必要があります。計画書は、各コース実施日の前日までに管轄の労働局長に提出しましょう。
計画書の提出後は、計画に基づいた取り組みを行います。取り組み~支給申請までの流れについては、公式のパンフレットをご確認ください。
助成金を活用してエンジニアを育成しよう
(出典)https://www.pexels.com/
自社でエンジニアを育成するには、社内の人件費のほかに、研修費や講師の派遣費用、eラーニングの利用料などがかかります。中小企業や個人事業主は、人材育成にかけられる資金に限りがあるため、助成金を積極的に活用しましょう。
助成金は一度受給できれば、返還の必要はありません。ただし、誰でも受給できるわけではなく、事業者・労働者・訓練内容に一定の要件が設けられています。
計画書を作成したり、就業規則を改定したりしなければならないケースもあるため、早めに準備を進めましょう。
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