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エンジニアのキャリア形成支援|企業が考える理由と進め方

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エンジニアのキャリア形成とは、本人が目指す役割と身につけたい技術を決め、日々の仕事と学習でそこへ近づいていく過程です。企業が支援するかどうかは、中途で入社したエンジニアが定着するか、次の採用で候補者に選ばれるかの両方に表れます。

支援の中身は、キャリア面談で希望を聞く、学ぶ時間と費用を用意する、評価制度に専門職の道を入れる、キャリアパスを社外にも示す、の4つに分けると手をつけやすくなります。どれから始めるかは、自社のエンジニアがどこでつまずいているかで決めるのが近道です。

Offers HR Magazine編集部監修者

株式会社overflow / 編集担当

Offers HR Magazine編集部

Offers HR Magazine 編集部は、株式会社overflow が運営する採用メディアの編集チームです。エンジニア採用に取り組む人事・採用担当者に向けて、採用手法・人事制度・組織づくりの情報を届けています。

エンジニアのキャリア形成の意味と、企業が支援する理由

エンジニアのキャリア形成は、技術の専門家・チームのマネージャー・プロダクト寄りの役割といった目指す姿を定め、業務の経験と学習を通じてそこへ近づく過程を指します。企業が支援する理由は、仕事内容や会社の先行きへの不安が転職のきっかけになりやすく、支援の有無が定着と採用の両方に表れるためです。

本人任せにすると、目指す役割を社内で実現できるかどうかが見えないまま、社外の求人と比べられることになります。企業がキャリアの見通しを一緒に描けば、その比較の材料を社内に用意できます。

情報通信業を自己都合で辞めた人は「会社の将来」と「仕事内容」を理由に挙げる割合が高い

厚生労働省の「令和7年転職者実態調査」で、直前の勤め先が情報通信業で自己都合により離職した転職者の離職理由(3つまで回答)は、「会社の将来に不安を感じたから」35.0%、「賃金が低かったから」33.9%、「満足のいく仕事内容でなかったから」31.9%の順に高くなりました。3つとも産業計の値を上回っています。

離職の理由(3つまで回答)

情報通信業

産業計

会社の将来に不安を感じたから

35.0%

25.2%

賃金が低かったから

33.9%

25.5%

満足のいく仕事内容でなかったから

31.9%

24.7%

人間関係がうまくいかなかったから

22.6%

22.2%

能力・実績が正当に評価されないから

19.1%

18.9%

労働条件(賃金以外)がよくなかったから

17.7%

23.4%

いろいろな会社で経験を積みたいから

16.4%

17.1%

他によい仕事があったから

16.1%

13.5%

出典:厚生労働省「令和7年転職者実態調査」個人票 第20表、同「令和7年転職者実態調査の概況」(2026年9月25日公表)。

表の区分は直前の勤め先の産業で、職種をエンジニアに限った集計ではありません。割合は自己都合で離職した人を100としたものです。

賃金は報酬制度の問題ですが、「仕事内容」と「会社の将来」は、どんな仕事を任され、数年後にどの役割に就けるのかという見通しの問題でもあります。キャリアの見通しを本人と共有しておくことは、この2つを理由にした離職を減らす手立てになります。

職業能力開発促進法が事業主に求めるキャリア形成の支援

職業能力開発促進法第10条の3は、事業主が必要に応じて、労働者の求めに応じたキャリアコンサルティングの機会の確保や、実務の経験を通じて能力を高められるような配置への配慮を行い、労働者の職業生活設計に即した自発的な能力開発を促すものと定めています(e-Gov 法令検索)。

条文は「必要に応じ」講ずるものとしており、面談の頻度や研修の中身までは決めていません。何をどこまで行うかは、各社が自社の人材育成の方針に合わせて決めることになります。

企業のキャリア支援は情報通信業で7割の事業所に仕組みがある

厚生労働省の「令和7年度 能力開発基本調査」で、正社員にキャリアコンサルティングを行うしくみがある事業所は48.4%でした。情報通信業は71.5%と産業の中でも高い一方、産業計では、しくみがある事業所の68.9%が正社員について運用上の問題を抱えています。仕組みを置くことより、使われ続ける運用のほうが課題になっています。

キャリア面談の仕組みの導入率・実施時期・目的

同調査で、正社員にキャリアコンサルティングを行うしくみがある事業所の割合は、情報通信業で71.5%、企業規模1,000人以上で72.6%でした。正社員に対する実施時期は「1年に1回、3年に1回など、定期的に実施する」55.2%、「労働者から求めがあった時に実施する」49.6%、「人事評価のタイミングに合わせて実施する」47.4%の順です。

導入している事業所が挙げた目的は「労働者の仕事に対する意識を高め、職場の活性化を図るため」69.2%、「労働者の自己啓発を促すため」67.3%(いずれも正社員)でした。効果は「労働者の仕事への意欲が高まった」44.9%、「自己啓発する労働者が増えた」36.7%が上位です。

出典:厚生労働省「令和7年度 能力開発基本調査」調査結果の概要(2026年7月31日公表)。

運用上の問題は「効果が見えにくい」と「相談が少ない」

キャリアコンサルティングのしくみがある事業所のうち、正社員について問題があるとした事業所は68.9%でした。内訳は「キャリアに関する相談を行っても、その効果が見えにくい」42.2%、「労働者からのキャリアに関する相談件数が少ない」41.6%、「相談を受けることのできる人材を内部で育成することが難しい」37.1%、「労働者がキャリアに関する相談をする時間を確保することが難しい」36.8%と続きます。

能力開発や人材育成の全般では、何らかの問題があるとした事業所が80.1%で、「指導する人材が不足している」59.5%、「人材を育成しても辞めてしまう」51.6%、「人材育成を行う時間がない」45.5%が上位でした。

出典:厚生労働省「令和7年度 能力開発基本調査」調査結果の概要(2026年7月31日公表)。

働く側の壁は「仕事が忙しくて学ぶ余裕がない」

同じ調査の個人調査では、正社員の82.8%が自己啓発を行う上で問題があると答えました。最も多いのは「仕事が忙しくて自己啓発の余裕がない」58.5%です。

自己啓発を行う上での問題点(正社員・複数回答)

割合

仕事が忙しくて自己啓発の余裕がない

58.5%

家事・育児が忙しくて自己啓発の余裕がない

27.4%

費用がかかりすぎる

26.2%

どのようなコースが自分の目指すキャリアに適切なのかわからない

21.6%

自分の目指すべきキャリアがわからない

20.0%

自己啓発の結果が社内で評価されない

16.6%

出典:厚生労働省「令和7年度 能力開発基本調査」調査結果の概要(2026年7月31日公表)。

この表は職種や産業を区別していない正社員全体の値です。それでも、時間・目指す方向・評価の3つが学びを妨げているという構図は、技術の入れ替わりが速いエンジニアの職場にもそのまま当てはまります。

エンジニアのキャリアパスは4つの型に分けて用意する

エンジニアのキャリアパスは、技術を深めるスペシャリスト、チームを率いるマネジメント、事業と技術をつなぐプロダクト寄りの役割、社内で職種を移るキャリアチェンジの4つに分けて考えられます。どの型を選ぶかは本人の志向で決まり、企業の役割は、それぞれの型に社内で進める道を用意しておくことです。

型

役職・役割の例

企業が用意するもの

スペシャリスト

テックリード、アーキテクト、特定領域(インフラ・セキュリティ・データ基盤など)の専門職

管理職にならなくても等級と報酬が上がる専門職の等級

マネジメント

エンジニアリングマネージャー、プロジェクトマネージャー、VPoE

小さなチームのリードを任せる機会と、マネジメントの研修

プロダクト寄り

プロダクトマネージャー、顧客と技術をつなぐセールスエンジニア

企画や顧客折衝に関われる配置

キャリアチェンジ

データ分析・品質保証・技術広報・エンジニア採用などへの社内異動

社内公募やジョブローテーションの制度

スペシャリストとマネジメントのどちらに進んでも等級と報酬が上がる制度は、複線型の人事制度と呼ばれます。複線型の制度が無いと、技術を深めたい人も昇給のために管理職を目指すしかなくなり、本人の志向と役割がずれていきます。役職ごとの役割と名称は「エンジニアの役職一覧とキャリアパス」で整理しました。

型は入社時に決め切る必要はありません。経験を積むなかで志向が変わることも多いため、面談のたびに見直せる形で記録しておく運用が現実的です。

用意したキャリアパスは求人票と採用ページにも書く

社内で用意したキャリアパスは、求人票や採用ページにも書くと中途採用の材料になります。入社後にどの型へ進めるか、どんな技術や役割を経験できるかが分かれば、候補者は入社後の姿を具体的に比べられます。採用の段階で仕事内容を具体的に伝えておくことは、「満足のいく仕事内容でなかった」という理由での離職を減らす手立ての1つです。

社外から見える採用ページや技術ブログで、キャリアパスや開発環境が候補者に伝わっているかは、エンジニア採用力チェックで確かめられます。企業URLを入力すると、技術ブランド発信力・技術環境の透明性・採用情報の充実度など5指標24項目で公開情報を採点したレポートが、1営業日以内にメールで届きます。

企業がエンジニアのキャリア形成を支援する進め方

社内の支援は、キャリア面談で目指す型を聞く、業務の中に学ぶ時間と費用を用意する、評価制度に専門職の道を入れる、の順に進めるのが、能力開発基本調査で挙がった問題に1つずつ対応できる順番です。最初の2つは、評価制度を変えずに始められます。

定期的なキャリア面談で目指す型と1年の目標を決める

「相談件数が少ない」という問題は、本人からの申し出を待つ運用で起きやすい問題です。年1回以上の定期の面談と、毎月の1on1の一部をキャリアの話に充てる形にすると、相談の機会を本人の積極性に頼らずに確保できます。

「効果が見えにくい」への対策は、面談で決めた目標を、翌期の担当業務と評価の項目に書き写しておくことです。面談の記録が配置や評価に反映されれば、本人にも上司にも効果が見えるようになります。キャリアコンサルティングの制度の作り方は「キャリアコンサルティングとは」で扱いました。

キャリア面談で確認して記録する項目

キャリア面談では、目指す型・伸ばしたい技術・次の1年で任せる役割・必要な支援・前回からの変化の5つを確認し、毎回同じ様式で記録します。項目を固定しておくと、面談の担当者が変わっても話がぶれず、記録を評価や配置の検討に使えます。

確認する項目

聞き方の例

記録をつなげる先

目指す型

3年後、技術を深める側とチームを率いる側のどちらに近い仕事をしていたいか

キャリアパスの型の選択

伸ばしたい技術

次に身につけたい言語・設計・運用の領域は何か

学習の時間と費用の配分

次の1年で任せる役割

今のチームで、どの仕事なら挑戦として引き受けたいか

翌期の担当業務と目標

必要な支援

学ぶ時間、相談相手、社外の勉強会など、何があれば進めやすいか

上司と人事が用意するもの

前回からの変化

前回決めた目標のうち、進んだもの・止まったものとその理由

評価面談での振り返り

聞き方は質問の例にすぎません。本人が答えにくい項目は、1on1を重ねるなかで少しずつ埋めていけば十分です。

中途入社のエンジニアには入社3か月以内に最初の面談を設定する

中途で入社したエンジニアには、入社から3か月以内を目安に最初のキャリア面談を設定します。入社前の面接で聞いた志向と、配属後に任されている仕事が合っているかを早い段階で確かめるためです。

面接の評価記録に残した志向や希望の役割を面談の場に持ち込むと、本人は採用の段階で話したことが社内に引き継がれていると分かります。食い違いが見つかったら、配置や担当業務の調整を次の四半期までに検討します。

学ぶ時間と費用を業務の中に組み込む

能力開発基本調査で正社員の58.5%が「仕事が忙しくて自己啓発の余裕がない」と答えている以上、学習を業務時間外の自主性に任せても続きません。週に数時間の学習枠、社内勉強会、技術カンファレンスの参加費や書籍代の補助など、時間と費用を会社が持つ形にします。

「どのコースが目指すキャリアに適切かわからない」(21.6%)には、4つの型ごとに次に身につけたい技術を示しておくのが対応策です。育成計画の立て方と手法は「エンジニアの人材育成|計画の立て方と手法」で詳しく解説しています。

評価制度に技術の専門職の道を入れる

「自己啓発の結果が社内で評価されない」(16.6%)を放置すると、学んでも報われないという受け止めが広がりかねません。評価項目に技術の習得や社内への共有(設計レビュー、勉強会の講師など)を入れ、スペシャリストの等級を設けて、管理職にならなくても報酬が上がる道を示します。評価項目の作り方と運用の注意点は「エンジニア評価制度のポイントと注意点」にまとめました。

キャリア形成の支援は面談の記録から始めて評価につなげる

エンジニアのキャリア形成の支援で最初に行うのは、全員と定期のキャリア面談を行い、目指す型と次の1年の目標を記録することです。次に学ぶ時間と費用を業務の中に確保し、記録した目標を評価制度と求人票に反映させる順に進めると、手戻りが少なくなります。

情報通信業では事業所の71.5%が正社員向けのキャリアコンサルティングのしくみを持っており、仕組みがあるだけでは他社との違いになりにくくなっています。しくみがある事業所の68.9%が正社員について運用上の問題を挙げていることを踏まえると、差がつくのは、面談の結果を配置・評価・採用の情報発信に結びつけ、本人に変化が見える状態を作れるかどうかです。

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