デジタル人材を育成・採用する方法を解説。社内DXを進めるために必要なプロセスとは

Offers HR Magazine編集部 2023年10月4日

Offers HR Magazine編集部

目次

企業のDX推進が叫ばれる中、中小企業からは「DXの担い手となるデジタル人材がいない」という声が上がっています。デジタル人材は、従来のIT人材とどこが異なるのでしょうか?必要なスキルセットや採用プロセス、育成のポイントを紹介します。

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デジタル人材の定義

(出典)https://www.pexels.com/

デジタル人材は、企業のDXを担う中心的な人材です。いくら優れた技術が誕生しても、その担い手がいなければ、DXは実現しません。デジタル人材とはどのような人材を指すのでしょうか?IT人材との違いについても理解を深めましょう。

DXを担う人材の総称

デジタル人材は、企業のDX推進を担う人材の総称です。DX(Digital Transformation)とは、デジタルテクノロジーの力でビジネスモデルやプロセスなどを抜本的に変革し、新たな価値や体験を生み出すことを指します。

デジタル人材は、以下のようなデジタルテクノロジーに精通していると同時に、それらを使いこなすスキルを持っている人材です。

  • AI
  • IoT
  • 5G
  • エッジコンピューティング
  • クラウドコンピューティング
  • センシングデバイス
  • ビッグデータ

企業のDXを推進していくには、技術スキルだけでなく、対人スキルやビジネススキルも持ち合わせている必要があります。

IT人材と何が違う?

経済産業省の資料によると、IT人材とは、情報サービス・ソフトウェア企業でITサービスやソフトウェアの提供を担う人材を指します。具体的には、情報システム部門の人材やITを高度に活用する人材などです。

また、中小企業白書(2016年版)の中では、ITの活用や情報システムの導入を企画・推進・運用する人材と定義されています。

IT人材が技術面の導入や運用を行う「実行者」であるとすれば、デジタル人材は、デジタル技術によって企業に新たな価値を提供する「提供者」といえるでしょう。

参考:- IT 人材需給に関する調査 -

中小企業庁:中小企業白書(2016年版)全文

デジタル人材が注目される背景

(出典)https://www.pexels.com/

近年、デジタル人材が注目される背景には、2025年の崖やDXの推進などがあります。社会のニーズが高まる一方で、DXの担い手は不足しているのが現状です。

「2025年の崖」問題

デジタル人材が注目される一つ目の理由は、2025年の崖問題です。2025年の崖とは、経済産業省が公表したDXレポートの中で登場する言葉です。

ビジネス環境が急速に変化する中、市場での競争優位性を強化するためには、企業のDXが欠かせません。多くの経営者は、DXの重要性を認識しているものの、以下のような要因によって実行が阻害されています。

  • 既存システムが部門ごとに構築されていて、全社横断的なデータ活用が困難
  • 長年の運用で複雑化・ブラックボックス化したシステムがある
  • 業務自体の見直しが必要で、現場サイドの抵抗が大きい

これらの課題が解決されない場合、2025年以降は年間で最大12兆円の経済損失が生じる恐れがあります。2025年を目前に、デジタル人材の確保が課題となっているのです。

参考:DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~

DXの推進によるニーズの高まり

政府によるDX推進も、デジタル人材が注目される理由の一つです。経済産業省は、2020年11月に「デジタルガバナンス・コード」を策定しました。産業界のDX推進に向けて企業が実施すべき事項をまとめた文書で、2022年9月に改訂が行われています。

デジタルガバナンス・コードでは、企業のDXレベルに合わせ、DX認定企業や先進企業の選定を行う制度が設けられました。今後は、DXに取り組めていない企業とDX先進企業との格差が広がるでしょう。

中堅・中小企業がDXを実現するには、デジタルテクノロジーを活用できるデジタル人材が欠かせません。従来のIT人材もDX推進に関わる人材ではあるものの、その役割は限定的です。

技術を運用するだけでなく、企業のビジネスモデルや組織の在り方に変革を与えられる人材が求められています。

参考:産業界のデジタルトランスフォーメーション(DX) (METI/経済産業省)

デジタル人材に求められるスキル

(出典)https://www.pexels.com/

企業のDXを推進するデジタル人材は、技術面のスキルだけでなく、マネジメントやコミュニケーションといったビジネス面のスキルを備えている必要があります。自社の人材に不足しているスキルを見極め、人材の採用・育成を検討しましょう。

プロジェクトマネジメントスキル

企業のDXは、社内のシステムを入れ替えたり、新たなITツールを導入したりするだけの表面的なものではありません。

業務プロセスはもちろん、ビジネスモデルや組織の在り方までもを大きく変える取り組みであり、すべての従業員を巻き込むビッグプロジェクトになる可能性が高いでしょう。

プロジェクトを成功に導くには、プロジェクトマネジメントスキルが欠かせません。スケジュール管理はもちろん、コスト面・品質面・リスク面の管理もしっかりと行える人材が求められます。

データサイエンスの知識とスキル

DXを進める上では、膨大なデータから自社の課題を抽出・分析し、課題の解決方法を探る必要があります。

表やグラフを使ったデータ分析は以前から行われてきましたが、近年は、ビッグデータや機械学習が導入され始めています。データサイエンスに長けた人材が企業にいるかどうかによって、企業の成長が左右されるといっても過言ではありません。

データサイエンスとは、アルゴリズムや統計学などの理論を活用し、データから有益な知見を得る学問・分野です。経済産業省のデジタルスキル標準において、データサイエンティストは、DX推進を担う重要なポジションとして位置付けられています。

参考:デジタルスキル標準ver.1.0|経済産業省

IT関連の知識とスキル

デジタル人材には、IT関連の知識とスキルが必須です。エンジニア職でなくても、AIやブロックチェーンなどの最新テクノロジーや、IT市場の動向についても精通している必要があるでしょう。

ポジションによっては、IT技術を直接使うことはありませんが、知識ゼロの状態では、IT技術者との意思疎通が図れません。

IT関連の知識・スキルを測る共通のものさしの一つに、「ITスキル標準(ITSS)」があります。高度なIT人材の育成を目的に作成されたもので、7段階のレベルが設けられています。

参考:ITスキル標準(ITSS) | デジタル人材の育成 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構

UI・UXへの理解度

UI(User Interface)とは、製品・サービスと利用者とをつなぐ接点です。例えば、WebサイトでいうUIとは、サイトの見た目や操作性など、ユーザーが目にするもの・触れるもの全てがUIに含まれます。

UX(User Experience)とは、ユーザーが製品・サービスによって得られる体験です。モノが溢れ、他の製品との差別化が難しくなっている現代、分かりやすい・使いやすい・美しいといったUXを基に製品・サービスが選ばれる傾向があります。

デジタル人材には、UI・UXへの理解が求められます。最新のテクノロジーを駆使して、製品やサービスを作ったとしても、ユーザー視点が理解できていなければ意味がありません。

UIデザイナー・UXデザイナーだけでなく、すべてのデジタル人材に必要なスキルの一つといえます。

デジタル人材の採用課題

(出典)https://www.pexels.com/

DXが急がれる中、多くの企業はデジタル人材の採用戦略を策定し、積極的な人材採用を進めようとしています。しかし、人材不足や受け入れ体制の未整備により、採用が順調に進まない企業も少なくありません。

デジタル人材が不足している

日本では、デジタル人材が大幅に不足しており、採用したくてもできない企業が多いのが実情です。経済産業省の資料によると、日本の約76%の企業がDX人材の不足を感じているといいます。

「デジタル競争力ランキング2022」において、日本は63カ国中29位と過去最低を記録しました。「人材/デジタル・技術スキル」の項目は62位で、他国に比べてかなりの遅れを取っていることが分かります。

デジタル人材の確保は、外部から採用する方法と自社で育成する方法の二つがあります。人材採用に課題を抱えながらも、全社的なリスキリング(学び直し)をしている企業はわずか7.9%に過ぎません。

参考:デジタル人材育成プラットフォームの取組状況について|経済産業省

社内の受け入れ体制が整っていない

デジタル人材の重要性を認識しながらも、人材の受け入れ体制を整備していない企業も多く見受けられます。せっかく採用しても人材が定着せず、採用活動にかけた時間と労力はすべて水の泡となるでしょう。

経済産業省の資料によると、デジタル人材が不足する理由に「デジタル人材を採用する体制が整っていない」と答えた企業は約43%に上っています。

株式会社ワークポートがデジタル人材採用の実態を調査したところ、デジタル人材採用に課題を感じる企業は69.2%でした。候補者数の不足のほか、「スキルの高い人材が求める年収や働き方を提示できない」といった課題が浮き彫りになっています。

参考:【調査報告】人事担当者に聞いた!デジタル人材採用の実態について

82.1%の企業がデジタル人材不足を実感 70.9%の企業が積極採用を実施するものの

69.2%が採用に苦戦と回答 売り手市場で人材争奪戦激化 育成・研修を強化する企業も|News|株式会社ワークポート 企業サイト

デジタル人材を採用するポイント

(出典)https://www.pexels.com/

デジタル人材の母数が圧倒的に少ない中、企業はどのような戦略で採用を進めればよいのでしょうか?ポイントは、受け入れ体制を整えた上で、待ちの採用から攻めの採用に切り替え、企業から積極的にアプローチをかけていくことです。

まずはリファラル・ダイレクトリクルーティングを検討

事務職や営業職といったビジネス職であれば、求人広告の掲載でも人は集まります。しかし、希少価値が高いデジタル人材に対しては、待たずに採りにいく姿勢が必要です。

特に、社員の紹介を通じたリファラル採用や、SNSを活用したダイレクトリクルーティングは、採用市場にいない転職潜在層へのリーチが可能です。デジタル人材が多く集まるイベントに積極的に顔を出し、ネットワークを作っておくのも有効でしょう。

複数の採用チャネルを取り入れる

採用チャネルは一つだけに限定せず、複数をうまく組み合わせましょう。これまでは、人材紹介や求人広告がメインでしたが、近年は採用手法が多様化し、リファラル採用・ダイレクトリクルーティング・SNS採用などを取り入れる企業が増えました。

前述の通り、デジタル人材の採用はハードルが高く、やみくもに採用チャネルを増やしても思ったような成果は得られません。自社が求める人材像を明確にした上で、チャネルの絞り込みと適切なアプローチ方法を考えましょう。

SNSから自社のオウンドメディアに誘導するなど、複数の採用チャネルをうまく連携させることが重要です。

ポテンシャル採用も視野に入れる

即戦力となる優秀な人材を確保するには、それなりの好待遇を用意しなければなりません。多くの中小企業は、大手企業やメガベンチャーに比べると給与が見劣りするため、人材獲得競争を勝ち抜くのは容易ではないといえます。

即戦力人材だけに執着しすぎると、いつまで経ってもDXは進みません。社内での人材育成を念頭に、ポテンシャル採用を検討しましょう。未経験でもポテンシャルが高ければ、訓練を重ねることで企業の戦力になります。

特に、デジタルネイティブと呼ばれる若い世代は、デジタル機器との相性が良く、柔らかい頭で多くの知識を吸収します。上の世代よりもデジタルリテラシーやITリテラシーが高い傾向があり、ポテンシャルはかなり高いといえるでしょう。

自社の強みを発信する

採用活動は、企業が一方的に人材を選ぶプロセスではありません。良い人材に入社してもらうために、企業が応募者に魅力付けを行う機会でもあります。求人票に採用条件を乗せるだけでなく、自社の強みや魅力を積極的に発信しましょう。

近年は、働きがいや社会貢献性、労働環境を重視する人が増えています。「リモートワーク可能」「幹部候補を目指せる」など、他社との差別化ができるポイントは探せば探すほど出てくるはずです。

代表的な発信方法には、SNS・採用ブログ・採用イベントなどがあります。社内で活躍している従業員に協力を仰ぎ、座談会を開くのもよいでしょう。

デジタル人材を育成する方法

(出典)https://www.pexels.com/

デジタル人材のニーズは右肩上がりで、企業間の人材獲得競争は激化する一方です。今後、外部調達の難易度はさらに上がるため、社内での人材育成は避けて通れません。代表的な育成方法を紹介します。

社内で学習機会を提供する

企業のDXは、全社的な取り組みであり、たった1人のデジタル人材を採用しただけでは、大きな変化は見込めません。社内で学習機会を設け、デジタル人材に必要なスキルセット・マインドセットを既存社員に習得させる必要があります。

まずは、身に付けるべきスキルを社員に共有し、専門知識のある社員を講師とする学習コミュニティや研修プログラムを作りましょう。社員の自主性に任せるのではなく、会社が仕組みを作り、学びを主導することが肝要です。

外部研修で専門性を身に付ける

デジタル人材に必要なスキルセットは、AI・ビッグデータ・クラウド・デザインシンキング・アジャイルと多岐にわたります。

社内に講師ができる人材がいない場合や最新の知識を身に付けたい場合は、外部研修を活用するのが望ましいでしょう。具体的には、大学や専門学校などのテック系講座に社員を参加させたり、外部講師を自社に招いたりする方法があります。

外部研修は社内研修よりもネットワークや設備が整っているケースが多く、ハンズオン講座では、知識やスキルがしっかりと身に付きます。社内のリソースを使わずに学びが提供できるのも大きな利点です。

資格取得の支援

社内に育成のノウハウがない企業は、どのような知識をどこまで身に付けさせたらよいのかで迷うことがあります。デジタルやITに関する資格は、スキルを測る一つのものさしであるため、社員に資格取得を推奨するのも一つの手でしょう。

資格取得に要した教材費や講座の受講料、資格試験の受験料などを会社がサポートすれば、社員は金銭面を気にせずに学びに集中できます。学習意欲を引き出すために、資格手当を設けるのもよいでしょう。

定着率向上も重要な施策

(出典)https://www.pexels.com/

採用・育成した人材が離職すると、採用や育成にかけたコストや労力が無駄になります。デジタル人材の慢性的な不足が続く中、採用活動を一からやり直すのは企業にとって大きな負担です。定着率アップに向けた施策を講じましょう。

ミスマッチによる離職は起きやすい

人材の離職は、採用のミスマッチによって起こります。仕事内容や労働条件、組織風土などが応募者に合っていない場合、早期離職につながります。

自社に合わない人材がいれば、他の社員との摩擦が生じやすくなるため、チームのモチベーションも低下するでしょう。

ミスマッチが起こる原因の一つは、人材をしっかりと見極められていないことです。特に、採用担当者が技術畑の出身でない場合、求めるスキルを明確に示せなかったり、過去の実績や経歴を当てにしすぎたりする傾向があります。

採用は人事部だけで行わず、必ず現場を巻き込みましょう。応募者のスキルチェックや面接に現場責任者を参加させれば、業務とのマッチ度やチームとの相性がより的確に把握できます。

待遇・評価の適正化が重要

デジタル人材を採用するに当たり、待遇の見直しや人事評価の適正化を行う必要があります。優秀なデジタル人材を採用・育成できても、仕事ぶりが正しく評価されなければ、モチベーションやエンゲージメントは下がる一方です。

例えば、社内で前例のないことに取り組む際、失敗の繰り返しから成功へのヒントをつかむ「Fail Fast(誰よりも早く・多く失敗する)」という考え方が重要になってきます。

しかし、成果主義だけの人事評価では、失敗で評価が下がるのを恐れ、積極的な挑戦ができない可能性が高いでしょう。年功序列に偏った人事制度も若手や中途入社者のモチベーションを下げる要因になります。

不満をキャッチアップできる関係構築も鍵

社会人経験のない新卒は比較的なじみやすいですが、中途採用は前職との比較によって、新たな職場環境や組織風土をなかなか受け入れられない傾向があります。

中途採用だから問題ないだろうと適切なサポートやフォローを行わないでいると、不平や不満を抱くようになるでしょう。既存社員との間に壁ができ、最終的には早期離職につながる可能性があります。

優秀な人材に長く働いてもらうためにも、定期的な面談や親睦会を通じた、チームの関係構築に努めましょう。面談では不満や悩みをキャッチアップし、改善・解消する方法を考えます。

デジタル人材により事業を成長させる

(出典)https://www.pexels.com/

DXの担い手は、IT人材からデジタル人材へと移行しています。最新テクノロジーを扱う技術スキルやプロジェクトを管理するマネジメントスキル、そして変革を恐れないマインドを持った人材は、企業の成長に大きく貢献するはずです。

実際、優秀なデジタル人材の採用は難しく、採用しても定着化に失敗するケースが多く見受けられます。受け入れ体制をしっかりと整備した上で、採用計画を策定しましょう。今後、採用難はさらに加速するため、採用と育成の両輪を回すことが重要です。

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