エンジニアの内定辞退を防ぐ方法は?内定取り消しは法律違反?内定と採用の違いについて解説

Offers HR Magazine編集部 2023年8月1日

Offers HR Magazine編集部

目次

エンジニアの採用難が続く昨今、内定辞退は企業にとって大きな痛手です。内定辞退や内定取り消しは、法律上の違反に当たらないのでしょうか?内定と採用の違いや、エンジニアの内定辞退を防ぐ具体策を解説します。

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「内定」と「採用」の具体的な違いは?

(出典)https://unsplash.com/

採用活動では、「内定」「採用」という言葉が頻出します。同じ意味と認識している人も多いですが、両者は似て非なるものです。法律上の捉え方も異なるため、意味や違いを明確にしておきましょう。

「採用」は選考プロセスを通過した状態

採用活動は、一定の選考プロセスに沿って行われます。採用とは、応募者が全ての選考プロセスを通過した状態、すなわち「採用試験に合格した状態」です。

採用が決定すると、企業側は労働条件を記載した労働条件通知書とともに、応募者に採用通知書を送付するのが通例です。採用通知書は、応募者を正式に雇用する意思を書面にしたもので、法的に義務付けられているものではありません。

応募者は自分が採用試験に合格した事実を電話連絡や面接などを通じて知り、採用通知で採用の意思を確認します。

「内定」は労使契約が成立した状態

内定とは、企業と応募者の間で「労働契約が成立した状態」を指します。

企業側が採用通知書を送付した時点では、労働契約はまだ成立していません。「あなたを正式に採用します」という内容に対し、応募者が入社承諾書や採用承諾書を提出して入社の意思を示せば、労働契約が成立した状態となります。

また、契約法の考え方では「応募者が求人案件に応募した時点」で労働契約への申し込みをしたと見なします。企業が「内定通知書」を送付すれば、応募者は労働契約への申し込みに承諾したことになるという見方もありますが、労働契約の成立においては、双方の意思の一致には具体的な労働条件(賃金、勤務時間、勤務地、職務内容など)についても合意していることが必要とされます。

参考:採用内定時に労働契約が成立する場合の労働条件明示について

「内々定」についても知っておこう

内々定は、企業が応募者に対して「将来的に内定を出す」と約束している状態です。書面契約を交わすケースは少なく、口約束やメールが一般的です。そもそも、なぜ内々定が行われるのでしょうか?

国の「就職・採用活動に関する要請」では、企業が新卒者に内定を出す日が卒業・修了年度の10月1日以降と決められています。内定日の前に優秀な学生を確保したい企業が多く、内々定という形で雇用を約束する習慣が生まれました。

参考:就職・採用活動に関する要請|内閣官房ホームページ

内定辞退は法律違反?

(出典)https://unsplash.com/

中小企業の採用活動では、せっかく採用したエンジニアが内定辞退してしまったと嘆く声も多く聞かれます。内定は労働契約が成立した状態です。内定者が一方的に辞退する行為は法令違反に当たらないのでしょうか?

内定辞退は労働者の権利であり違法性はない

内定者の内定辞退は、労働契約の解約に該当しますが、違法性はありません。民法627条では、期間の定めのない雇用について「各当事者は解約の申し出をいつでも行うことができる」とあり、会社に解約の申し入れをした日から2週間後に契約が解消されます。

企業が内定辞退を承諾するか否かにかかわらず、契約は自動的に解約される点に注目しましょう。いつでも解約が可能と定められている以上、企業側は内定辞退を出さないようにフォローする必要があります。

参考:民法627条| e-Gov法令検索

やり方次第で内定辞退が違法になるケースも

内定承諾後の内定辞退が違法になるケースはまれですが、ゼロとは言い切れません。裁判の判例を見ると、「内定辞退が著しく信義則上の義務に違反する態様」と判断された場合に限り、内定辞退が違法になることが示唆されています。

内定者は内定辞退の意思が固まった時点で速やかに会社に伝えるのが原則です。例えば、事前研修を受けたのにもかかわらず、入社日の直前に辞退を申し出れば、内定者は信頼を損ねる行為をしたといえるでしょう。

内定辞退が生じると、採用活動にかけたコストや時間が無駄になる上、採用活動を一からやり直さなければなりません。企業が被る不利益が大きければ、相手への損害賠償請求が認められる可能性があるでしょう。

採用内定取り消しは法律違反?

(出典)https://unsplash.com/

内定者の内定辞退が法律違反になるケースはまれですが、企業の内定取り消しは法に抵触する恐れがあります。採用担当者は「内定取り消しが認められるケース」「認められないケース」をしっかり把握しておきましょう。

内定取り消しは「解雇」と同じに扱われる

内定取り消しは法律上の解雇に該当します。労働契約法16条には「合理的な理由がなく、社会一般的に相当な処置だと認められない場合は解雇を無効とする」という記載があります。(解雇権濫用の法理)。

つまり、合理的な理由で社会一般的に相当な処置であれば、内定取り消しは認められます。以下は、内定取り消し事由の一例です。

  • 履歴書や職務経歴書などに重大な虚偽の申告があった
  • 内定者が刑罰法規に違反した
  • 病気やケガを患い、通常の業務に支障がある
  • 内定者が入社の前提条件を満たさなくなった
  • 経営悪化で整理解雇をせざるを得ない(企業の都合)

なお、内定取り消し事由は、採用通知書や内定通知書などにあらかじめ明記されている必要があります。

参考:労働契約法 16条 | e-Gov法令検索

労働相談Q&A|2.採用内定取消・延期

内定取り消しが違法になるケース

上述の通り、内定取り消し自体は違法ではありませんが、以下のような内定取り消し事由は不当と見なされます。

  • 内定者が妊娠したため(男女雇用機会均等法9条に抵触)
  • 特定の宗教の信者であるため
  • 採用の定員をオーバーしたため
  • 過去に夜の店で働いていたため
  • 自社の社風にマッチしないため

「採用の定員をオーバーした」は、企業の身勝手な理由です。企業側の内定取り消し事由として認められているのは経営悪化による整理解雇であり、以下の条件を満たしてはじめて取り消しが可能となります。

  • 人員削減が企業経営上の十分な必要性に基づいている
  • 解雇を回避するための措置を尽くしている
  • 解雇対象者の選定が客観的・合理的な基準に基づいている
  • 労働組合または労働者に解雇の必要性をきちんと説明している

参考:労働契約の終了に関するルール|厚生労働省

内定取り消し企業の公表制度に注意

内定取り消しは、労働者にとっては好ましいものではありません。以下の条件に当てはまる企業は、内定取り消しのペナルティーとして、厚生労働省のホームページ上で企業名を公表されます。

  • 内定取り消しの内容が2年度以上連続している
  • 同一年度内で内定取り消された者が10人以上いる
  • 事業活動の縮小の必要性が明らかに認められない
  • 内定が取り消された新規学卒者に対し、内定取り消しの理由を十分にしていない
  • 内定が取り消された新規学卒者に対し、就職先を確保する支援を行っていない

企業名が公表されるデメリットとしては、社会的な信用の失墜やイメージダウンなどが挙げられます。内定取り消しが多い企業として、以後は応募者が減る可能性があるでしょう。

参考:厚生労働省:採用内定取消し問題への対応について

エンジニアに内定辞退される理由は?

(出典)https://unsplash.com/

エンジニアの採用市場は圧倒的に売り手が優勢で、内定辞退も珍しくありません。人材獲得が思うようにいかないのには理由があります。採用プロセスでの課題を探り、優秀な人材を他社に奪われないための対策を講じましょう。

採用選考や担当者への不信感

内定辞退の理由で多いのが、採用選考で接する担当者・面接官への不信感です。面接官がエンジニアの業務を理解していない場合、質問に対して十分な説明ができなかったり、給与水準に見合わない業務を提示したりする可能性があります。

エンジニアは面接官の受け答えを通じて、「入社後も自分の能力が正当に評価されないのではないか」「十分な収入が得られないのではないか」と不安を抱くでしょう。

IT業界は慢性的な人手不足で、優秀なエンジニアを確保するのは容易ではありません。下手に出る必要はないものの、応募者の立場に立った面接を心掛ける必要があります。

エンジニアが内定辞退する原因は?内定辞退の原因と辞退されないために注意すべきポイント | Offers HR Magazine

他企業に心変わりした

エンジニアの中には、同時期に複数社から内定をもらう人もいます。能力のあるエンジニアとなると、高待遇・高収入でスカウトされるため、他企業に心変わりするケースは少なくありません。

特に、選考に時間がかかる企業は、選考プロセスをいち早く見直すことが重要です。面接から内定通知までの期間が長いほど他社と接する機会が多くなり、気持ちが揺れ動きやすくなります。

中には、面接に落ちたのかもしれないと思い込み、他社の内定を承諾する人もいるでしょう。

待遇や企業文化とのミスマッチ

働く環境や企業文化が自分の理想と合わなければ、労働意欲は十分に満たされません。エンジニアの多くは、フルリモートやフレックスタイムといった柔軟な勤務形態を望む傾向があります。

仕事柄、休日出勤や夜間出勤になるケースも多く、他のビジネス職と全く同じ待遇・労働条件では不公平感を覚える人がいるのも事実です。

また、内定後の面談やイベントで社員や経営者と交流するうち、「思っていた企業ではなかった」「良好な人間関係が構築できないかもしれない」と不安になり、内定を断る人もいます。

内定辞退を防ぐためにも、選考の段階でカルチャーフィットを見極める必要があるでしょう。

エンジニアの内定辞退を防ぐ対策を紹介

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転職市場において、エンジニアの流動性は低下しています。内定辞退があれば、多くの時間と労力をかけて採用プロセスをやり直さなければならないため、内定辞退を防ぐ手だてを考える必要があります。

エンジニアが採用活動に参加する

エンジニアの業務に精通していない採用担当者がプロセスを仕切ると、「適切な人材要件が定義できない」「技術スキルの見極めができない」「応募者の質問に答えられない」などで、採用成功率が下がります。

採用を人事だけで行おうとせず、現場のエンジニアに協力を仰ぎましょう。採用要件の決定から最終面接に至るまで、できるだけ多くのプロセスに関わってもらいます。片手間にならないように、採用活動に使うリソースは十分に確保しましょう。

内定後に放置しない

内定から入社日までの時間が長すぎると、日ごとに入社意欲が低下します。担当者から連絡がない場合、「自分は必要とされていないのではないか」と不安になる人もいるようです。

採用活動がうまくいっている企業の多くは、内定後の内定者フォローに力を入れています。モチベーションを維持したまま入社日を迎えられるように、以下のようなフォローを行いましょう。

  • 既存社員との座談会
  • 内定者同士の交流会
  • 研修・ワークショップ
  • オフィスの見学会
  • 定期連絡・社内報の送付

求人サイトの情報は正確に記載する

求人サイトに募集要項を記載する際は、必要なスキルや経験、労働条件などを正確に記載しましょう。

採用担当者が非IT人材の場合、プログラミング言語の表記を間違えるなどの初歩的なミスを犯す場合があります。業務に必要な言語が絞り込まれていなかったり、想定年収のレンジがあまりにも広かったりすれば、応募者は戸惑いを隠せません。

現役エンジニアである応募者は、採用プロセスに現場のエンジニアが関与していないことをすぐに見抜きます。人事と現場の連携がうまくいっていない企業は多くのエンジニアに敬遠されることを忘れてはいけません。

求人サイトと面接官から伝えられた情報の不一致も内定辞退率の上昇を招くため、面接前に必ずサイトに目を通しておく必要があります。

内定・採用辞退を防ぐ取り組みが重要

(出典)https://unsplash.com/

企業の内定取り消しにはペナルティーがありますが、内定者の内定辞退に対するルールはそれほど厳しくありません。

ひと昔前は、企業が人を選ぶ風潮がありましたが、今は人が企業を選ぶ時代へと変わっています。特に、IT業界は採用難が顕著なため、多くの企業はエンジニアの内定辞退を必死に食い止めようとしているのが現実です。

内定辞退が目立つ企業は、プロセスのどこに問題が生じているのかを探りましょう。内定取り消し・内定辞退が少ない企業は、多くのエンジニアに好印象を与えます。

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